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探偵・早乙女三郎

【探偵・早乙女三郎】 準推薦
■制作者/nyankone(ダウンロード
■容量/8.52MB

IT企業「サイバーバルーン」の社長の突然の死で混乱する中、私立探偵早乙女三郎の元に、依頼人が。情報流出に関しての調査依頼。調査に乗り出す早乙女にメールが届いた。メールの送信元は、死んだはずの「サイバーバルーン」社長だった。一体どういう事か? メールをやり取りし、Blogも書く、異色の探偵アドベンチャー。

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■今日びの探偵はBlogも書きます

探偵が主人公の作品って、案外少ない気がします。「探偵役」がいる推理ノベルゲームは多々ありましたが、この作品の主人公は、正真正銘の探偵です。しかも、メールをやり取りし、Blogまで書きます。インターネットが登場する作品はありましたが、Blogまで書いてしまう登場人物は初めてですね。異色の探偵アドベンチャーゲームのご紹介です。

この作品は、ノベルゲームというよりはアドベンチャーゲームに分類されると思います。いわゆるクリッカブルマップ形式のアドベンチャーゲームですね。マップで行き先をクリックし、色んな人に会い、聞き込みを行ったり、証拠品を見せたりして新たな証拠の手がかりを掴んで行く、この手の作品としてはオーソドックスな作りで、目新しいシステムは特にありません。既読スキップもちゃんとついている(システムは吉里吉里2)ので、ストレスなくプレイできるでしょう。

さて、Blogを書いてしまう主人公の探偵早乙女三郎ですが、この作品の目の付けどころは非常に面白いですね。何せ、いきなり死んだはずの人間からメールが届くんですから。メールがテーマの作品と言えば「Love Mail」がありました。あちあはどちらかと言えば、サスペンス風味でしたが、この作品はサスペンス風の雰囲気はあまりありません。むしろ、どちらかと言うと、SF風味というか(という表現も正しいとは思えないけど)、そんな感じ。この「死人からのメール」の秘密は、もちろん作中で明らかになりますが、かなり奇抜なオチがついて驚かされます。

ただ、SF風に奇抜すぎて、ちょっとメインの推理ものと上手く融合していない気がするんですよね。当たり前ですが、推理ものではリアリティが何より命です。登場人物が実は超能力者だったなんて設定があったら、それだけでぶち壊しですよね(当たり前だ)。この「死人からのメール」ネタは、直接には事件に関わらないですが(間接的には関わるといえるか)、奇抜さを求めるあまり、ちょっとリアリティを損ない、そのせいか世界観が少し説得力を欠く気がしました。キャラクターなどは全体にとても良く出来ているんですが。

また、メインの事件解決ですが、こちらも推理する楽しみや、事件の真実を探る喜びは薄い印象。気が付けば真実に到達しており、その真実も、トリックが凝っている訳ではなく、犯人が意外という訳でもなく、そこに至るまで波瀾万丈のドラマがある訳でもなく、何と言うかどっちつかずになっている感があります。メールのネタと事件とが、もう少し上手く絡んでいたら、凄く「化けた」作品ではないかと思います。ラストも、せっかく奇抜なオチがつくんですから、もう一山二山盛り上げても良かったのではないでしょうか。ちょっとあっさり終わってしまう感は拭えません。

グラフィックスは全体にとても綺麗です。立ち絵も非常に上手いですね。キーボードを上手に使ったタイトル画面も、センスを感じさせます。が、開始時のデモ(字がゆっくりと表示される)が飛ばせないのは、かなりのストレスになります。一回読んで終わりの作品ならそうでもないんでしょうけど……。

何か、ここまでのところを読んだら欠点しか書いていない気がするんですが(汗)、主人公の早乙女がBlogを書いてそれにコメントがついたりとか、全体に作者さんの創作意欲がうかがえる異色作で、個人的には評価したい一作です。一風変わった推理ゲームをやってみたい方にお勧めします。

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