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夏の日のレザナンス

【夏の日のレザナンス】 ■制作者/綾藤神楽(ダウンロード
■容量/2.40MB

倉沢佳澄は、ある日通学途中自転車にぶつかってしまい、かばんの中に入れていた携帯電話を壊してしまう。落ち込む佳澄だが、ある日妙な音と共に携帯電話が反応し、ホログラムのような画像が浮かび上がった。画像を通して知り合った2人の女の子と、ある日佳澄は会う約束をするが。ちょっと不思議な一夏のショートストーリー。

ここが○

ここが×

■夏と共に去りぬ

ちょっと古い作品。初出は02年ですから、7年前。私がレビューを書き始める前に公開されている作品です。何故今までこの作品がレビューになかったのか、少々不思議。今更という感もありますが、ご紹介。皆さんも既にご存知かも知れません。選択肢なしの短編ノベル「夏の日のレザナンス」です。

この作品が時代を感じさせるのは、その容量の小ささ。わずか2.4MBです。それでいて、内容はなかなか充実した作品です。シナリオ自体は、言ってみれば非常にシンプルな作り。携帯電話の故障を通じて立体画像で通話するという、少々SFめいた出だしですが、意外な展開がある訳ではなく、驚くラストがある訳でもありません。主人公である佳澄の心情の、微妙な移ろいを描く事に終始し、またそれを味わう物語です。

今作は、ちょっと禁断の恋(?)というか、百合チックな展開です。主人公の女性が、携帯電話の画像を通じて知り合った年上の女性に恋をするという内容。文章は主人公の少女の一人称ですが、さほど癖も嫌味もなく、安心して読めるタイプです。

そして、展開自体には大きな波がある訳ではなく、「出会いと別れ」という非常にストレートな構成です。が、登場キャラが3人とも女性である事、また独特の田舎情緒もあいまってか、とても暖かい雰囲気を持つ作品に仕上がっています。ラストも、非常にあっさりと終わりますが、ぶったぎり感はなく、むしろちょうど良い余韻を残してくれています。

ただ、伏線だの意外な展開だのは全くないですので、物語自体として見れば、若干拍子抜けする事なきにしもあらずです。せっかく作中に「夏」が生きそうな展開を見せているのに(具体的には、佳澄と樹たちの世界の季節のずれ)、それが全然生きていないんですよね。もちろん、「これはそういう物語なのだ」と納得できなくもないですが、この設定を生かしてラストに一捻りがあればなと思わされました。

また、事の発端となるSF的な背景の説明もまるでありません。もちろん、SF的な説明をくどくどする必要もないと思いますが、一言だけでもあれば、世界観が説得力を増した気がしなくもありません。とは言え、作中で「ありえないというのは『それが絶対起こりえない』という意味ではなく、『他人に説明しても分かってもらえない』という事だ」とありましたので、これはこの作品の世界観なのでしょう。

グラフィックスは、田園風景の空気を感じそうな暖かみのあるものです。立ち絵や章ごとに入るアイキャッチもよくできており、全体に少女漫画風の空気を感じさせます。さすが長年愛され続けて来た作品だけあって、手堅くまとまった内容。しかし、エンディングの曲が「ハーバーランドでつかまえて」でおなじみの曲だったので、少々ずっこけたのは内緒です(笑)。

プレイ時間は40分程度。古い作品ですが、今こそプレイしておきたいと言える、良い雰囲気の作品です。システムはNScripter。温故知新、未プレイの方は是非どうぞ。

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