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いまじんすらっぷ!

【いまじんすらっぷ!】 ■制作者/空想村落(ダウンロード
■容量/3.62MB

大学にイマイチ馴染めず、自分の居場所を見失っていた久杉。ある日偶然「恋愛ゲーム研究会」の部室へと迷い込み、成り行きで部員にさせられる。作品制作に打ち込む部員たちがぶつかる壁とトラブル。作品は無事完成するのか。登場人物が全員男性という、一風変わった一本道の学園ノベル。

ここが○

ここが×

■究極の恋はゲームの中?

これは珍しい作品です。画面写真を見たら勘違いしてしまいそうですが、登場人物4名が全て男性なのです。それもそもはず舞台は大学の「恋愛ゲーム研究会」。これだけきくと「何だそりゃ?」ですが、意外なほど正統派のきちんとした作りの学園ストーリーになっています。

主人公達がゲームを制作するという作品と言えば、「ゲーム作ってます」という、まんまなタイトルの作品がありましたね。あちらは舞台が専門学校でしたが、こちらは大学のサークル。あちらは女性もいて華やかでしたが、こちらは野郎ばかり。雰囲気は格段に違います。そもそもこれは恋愛ノベルではありません。画面写真を見て恋愛ノベルかと思ってプレイすると、あまりに明後日の方向を向いた出だしで、プレイヤーは真っ二つに斬られてしまうでしょう(笑)。

この作品は、主人公達が作る作品が、作中で登場します。劇中劇という奴ですね。その作品のシナリオを巡って、「恋ゲ研」の部員達が討論する辺りの描写が、妙に現実味があって面白いです。登場キャラ達は、一癖も二癖もある人物ばかりですが、描写自体は過剰ではなく、むしろあっさり気味なため、かえって読みやすくなっています。4人が紆余曲折しながらも、1本の作品をまとめて行く過程が、なかなか良く描かれています。暑苦しいゲーム制作の様子と、劇中劇の落差が、なかなか面白いです。

4人のキャラクターは、そのバックボーンもちゃんと描かれてて、(劇中劇ではなく)制作部分では、一切立ち絵はないんですが(もっとも、彼らに立ち絵があったら、それはそれでアレな気も(笑))、思った以上にキャラクターは魅力的です。単なるオタク野郎ばかりではなく、みんなちゃんと思う物を持っています。長い作品ではないですし、全体に描写自体はあっさり目ですが、そんな4人の掛け合いは十分楽しめます。

ただ、現実の恋愛から逃避(?)して、「究極の女の子を作るぞ」という目的で恋愛ゲーム作成に打ち込むという大前提があるので、劇中劇をもっと現実に絡めた展開があれば、より面白かったんじゃないかと思います。劇的な事が一切起こらない展開で、これはこれでありだとは思いますが。劇中劇を現実にリンクさせてみるとか。そうすると全く別の作品になってしまう気もしますけど。

そして、終わり方は拍子抜けするくらいあっけないです。もう少し捻ったハッピーエンドがあっても良かった気がします(別にアンハッピーエンドという訳ではないんですが)。もちろん、主人公はちゃんとプレイヤーにメッセージを残してくれますから、ある意味綺麗な終わり方ではあるんですが、フィクションであるからにはもう一歩踏み越えたところが欲しかった気がします。基本的にハッピーエンド主義者なので(笑)。

音楽は、全て「TAM Music Factory」の素材。なので、どこかで聴いた曲ばかりが出て来ます。ただ、この作品のテーマを考えれば、「ノベルゲームで非常におなじみの曲が出て来る」というのは、悪くない気もします。

全体に、描写は淡白と言えば淡白なんですが、実は結構1本しっかりとした芯が通っている作品だと思います。なんやかんや理由を付けて、結局何もしないより、どんな物になろうが、とにかく何か作ってみる。作り終える事が出来れば、たとえ結果はどうあれ、作るために費やした時間は、自分のかけがえのない財産になる。出だしだけを見れば一見色物にも見えてしまいますが、創作活動に携わった事のある方なら、共鳴できる要素を多く含んだ作品だと思います。また、劇中劇のキャラクターが、結構深い台詞を言ったりしてて、一瞬はっとさせられました。

決して盛り上がりどころの多いストーリーではないですし、終わり方も淡白ですが、そういう芯の通った物語、そしてしっかり描かれたキャラクターがあってこそ、良好な読後感を生んでいるように思います。途中の展開にもう一押しあれば「準推薦」にしてました。

ツールは吉里吉里、選択肢はなしの一本道。プレイ時間は45分程度。私はこの作品から、少しやる気をいただきました。何か作品を作っていて、行き詰まりを感じている方は、この作品を読んでみてはいかがでしょうか。

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