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ラボータ

【ラボータ】 準推薦
■制作者/水穂堂(ダウンロード
■容量/21.0MB

伊藤冬美は普通の女子高生。特に目的がある訳ではなかったのだが、ある日ふと思い立ってコンビニエンスストアのアルバイトを始めてみる事にした。友人の静香のアドバイスも受けながら、慣れないアルバイトに奮闘するが……。後半の意外な展開と主人公の成長が見所の、仕事がテーマの一風変わった作品。

ここが○

ここが×

■仕事が苦しみなら人生は地獄だ

ノベルゲームのプレイヤーとか作者さんって、学生さんか社会人かでかなり価値観や目の付けどころが変わって来るのではないかと思います。この作品のテーマは「仕事」。目の付けどころが面白いですね。ちなみに私は、仕事がつまらないものだと思った事は一度もありません。もっとも「仕事はつまらない」なんて思っている職員ばかりの病院に、誰が行くかという話ですが(笑)。

この作品は、まずコンビニのアルバイトシーンから始まります。その辺りでは「短編なのかな」と思っていたのですが、私の予想は良い意味で裏切られました。起承転結がはっきりしており、メリハリのはっきり利いた、結構長いお話です。

主人公の冬美は、アルバイトで散々な経験をあれこれする事になります。そして、その描写がまたそれっぽいんですよ。私はコンビニでのアルバイト経験はないんですが(スーパーならあるな)、「体験談なのでは」と思うほどのリアリティ。冗長という意見もあるかも知れませんが、テンポの良い文章で、私は冗長さは感じず、むしろ作品世界の完成度を上げていると感じました。

さて、この作品の肝は後半です。あまりと言えばあまりな展開に、目が点になってしまいました。そして、後半になってストーリーは(というより主人公は)かなり説教臭くなっていきます。恐らく、一度でも社会人として働き、苦労して仕事をした経験がある人なら、この主人公の言動には、思わず張り倒したくなってしまう事でしょう(汗)。

しかし、そこでやめてしまわずに、是非最後まで読んでください。確かに、後半の冬美の台詞は「お前がそれを言うのはどうよ?」みたいなツッコミどころが多いです。しかし、紆余曲折を経験して、最後にはきちんと自分に何が欠けていたかを知って成長するシナリオの作りは、非常に上手いと感じました。

また、どちらかと言えば地味なテーマを取り扱っているのですが、割とテンポよくイベントといいますか、キーポイントとなる出来事が起こるので、読んでいて退屈しません。キャラクター描写も良くできています。ちょっと男性キャラの扱いが酷すぎるような気がしなくもないんですが(この作品の男性キャラをもって「男とはそういうものだ」と思われたら、少々遺憾)、江端君が良い奴なので、よしとしましょう(笑)。

ただこの作品、かなり際どい、というか18禁チックな描写が多いです。作品自体は別にそういう内容ではないですし、それらの描写はストーリー的に必要なものなんですが、読み手を選ぶところがある点は否定できません。

この作品で驚いたのは、「文章が変わって行く」事。前半は、何だか少々お馬鹿っぽい今時の女子高生風なんですが、後半で主人公が色々な本を読んで行くと、文章が明らかに変わって行くんですよ。一人称で語るノベルゲームに、こういうやり方があったのかと、非常に感心させられました。

プレイ時間は1時間半くらい。システムはLive Maker。選択肢はありますが、数が少ないですし、選択肢で展開が変わったりはしません。全体を貫く雰囲気はかなりぎすぎすしており、好みで言えば必ずしも私の好きなタイプの作品とは言い難いのですが(もっとほんわかしてる物語が好きなので)、物語としての完成度は、とても高い作品だと思います。

上でも書いた通り、社会人だと「何当たり前の事言ってんだ」となるかも知れません。ですから、学生の方、働いた経験のない方にお勧めです。読み終える頃、「なるほど、『仕事が楽しみなら人生は天国だ。仕事が苦しみなら人生は地獄だ』というゴーリキーの有名な言葉は真実だ」と、実感できるはずです。

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