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桜砂糖

桜砂糖 ■制作者/モンスターキャラメリゼ(ダウンロード
■容量/26.5MB

大学3年生の啓輔は、春休みに祖父の家を訪れた。何をするでもない毎日を過ごしていた彼の前に、ある日和服姿の少女が現われ、「あなたの願いを3つ叶えさせてくれませんか」と言ってきた。いぶかしく思いながらも、その少女に毎日会いに行く啓輔。さらっと読める短編恋愛ストーリー。

ここが○

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■春の田舎にサクラ咲く

ここ最近忙しくて、なかなか長い作品に手を出せません。気分転換に短編をプレイしてみました。短編だろうが長編だろうが、ノベルゲームに一番よく登場する季節は夏と決まっていますが、この作品の舞台は春。しかもタイトルは「桜砂糖」。まさにこの時期にプレイするにはぴったりの作品です。

この作品を内容で分類するなら、「時限恋愛もの」でしょう。同種の作品は多数出ています。あるいは「恩返しもの」と言ってもいいかも知れません。この2種類のキーワードだけで、大体この作品がどんな展開をするのか分かってしまいそうですが(笑)、フリーの恋愛ノベルゲームとしては非常に多く取り上げられているテーマである事は、間違いありません。

桜砂糖主人公の啓輔は大学3年生で、田舎の祖父の元へ行くところから話が始まります。よくある「夏に帰省もの」風の雰囲気ではありますが、舞台である祖父の古い家に、淡々と語る素朴な文章とアコースティックな曲で統一されたBGMがよくマッチし、独特の田舎情緒が上手く醸し出せていると言えましょう。

そして田舎でぼーっと過ごしていた啓輔は、ある日公園でぐったりと地面に横たわっている蝶を見つけるのです。そして啓輔は蝶を助けてやると、翌日着物姿の見知らぬ少女が現れて……と、ここまででもう展開が分かってしまった気がしますが(汗)、まあ大体思った通りの展開を見せます。

が、この作品はそこまで読んだらおおよそ展開の予想がついてしまうにも関わらず、妙に前半がかったるい感じがします。展開のテンポがイマイチよくないんですよね。この手の、数日で話が終わってしまう時限恋愛ものの場合は、テンポが命ですし、もうちょっと序盤はさくさく展開した方が良かったんじゃないかな、と感じました。

それと、「時限恋愛もの」ではあるんですが、啓輔がヒロインに対して恋愛感情を持つに至る理由付けの描写がほとんどないため、読んでいると「あれれ?」と思ってしまいます。序盤のテンポがもっと良ければ、そこはそれほど気にならなかったかも知れませんが、序盤はゆっくりと流れて、中盤から、心情の変化も含めてだだっと進んでしまうため、少々違和感を感じないでもありません。

しかし、終わり方はよくある「……というお話がありましたとさ」という、単なる「不思議なお話」で終わるのではなく、ちゃんと現在の主人公に繋げており、また冒頭の描写にも繋げる事で、すっきりとした読後感を生み出す事に成功しています。いわゆるサンドウィッチタイプと言われる作りの作品ですね。時限恋愛ものとしては必ずしも成功しているとは言い難いですが、サンドウィッチタイプの短編としては、良い読後感の作品だと思います。作中のイベントに繋げたオチの一言も、なかなか気が利いています。

とは言え、フリーノベルとしては極めて使い古されたテーマで、正直目新しさには欠けるところは否めませんので、どこかにもう一捻りがあれば、もっとアピールできる作品になったのではないかと感じます。例えば、祖父を上手く物語に組み入れたりしたら、一味違った風味を盛り込んだ上で、オリジナリティも出たのではないでしょうか。

プレイ時間は30分ちょっとくらいでしょうか。ツールはNScripterで選択肢はありません。確かによくある物語ではあるんですが、すっきりした読後感と、全体を包む暖かい雰囲気は、捨て難いものを持っています。間もなく桜の季節を迎えるこの時期、こんな短編作品はいかがでしょうか。

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