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安らぎは彼方へ

安らぎは彼方へ ■制作者/夢幻飛翔(ダウンロード
■容量/137MB

結崎大地は、中2の冬に事故にあってしまい半年間意識不明となった。通信制の高校に通いつつ必死のリハビリの日々を過ごし、高2の春に故郷の高校へ入る事になるが、すぐに大地はそこに自分の居場所がない事に気付いた。主人公が自分の居場所を求めて生きる恋愛ノベル。

ここが○

ここが×

■君のための居場所になろう

学園ものノベルゲームの主人公としてありがちなのが、主人公が大変な過去を持ち、そのせいで他人と交流できないとか、心を開けない、なんてパターンの物語です。そして、そういう物語の主人公は、得てして妙にネガティブだったりシニカルだったりして、読んでいて疲れる事が多いものです。その手の物語は、往々にして物語が重くなりがちなのですから、逆に主人公は過剰にネガティブに描かないか、あるいは描写を工夫しないと、読み手が途中で付き合いきれなくなります。

その点この作品は、主人公が過去に半年間も意識を失うほどの大事故にあい、久々に故郷に戻って来たら自分を知っている者が誰もいず、孤立するという、重い出だしなんですが、その重さを感じさせません。それはひとえに、重い物を背負っていながらも前向きにクラスメイトと交流しようとする姿や、誠実な言動にあると思います。この点、第一印象が良い作品ですね。

安らぎは彼方へヒロインは2人で、1人は一見人当たりが良い貴志理華、もう1人は顔を合わせれば主人公に嫌味ばかり言うクール系の神凪鏡子。一応メインヒロインは鏡子という事になるのでしょうね。彼女は、主人公の過去の事故とも関わりがありまして、シナリオが進めばその謎も明らかになっていきます。理華シナリオも鏡子シナリオも、主人公の良い性格も相まって、快適に読めますし、鏡子のちょっと嫌味な性格も、主人公が上手く受け流すので、ヒロインも上手く生かされています。

設定がシリアスなだけに、結構重い展開もありますが、冒頭で書きましたように、そこを他でもない主人公が上手に流れをコントロールしているため、読み手も胃にもたれません。そしてその流れで徐々にヒロインがシリアスな面を出して行くバランス感覚も良好だと思います。

ただ、設定というか前提というか、あれだけの大事故で両親からまるで放置される理由が、いまいちというかかなり不明です。この手のノベルゲームで両親不在というのはよくあるパターンで、それはそれでいいんですが、その理由にちょっと説得力がないのではないかと感じてしまうのが、惜しまれるところです。

もう1つ、この作品は時々カッコ書きで漢字にふりがなを振ってくれますが、それがまた中二というか何と言うか……(汗)。こういう「当て字ふりがな」は、ここぞという場面で一二度使うくらいなら効果もあるでしょうが、あんまり乱発すると、いささか食傷気味になってしまう点は否定できません。

さて、この物語は非常に登場人物が少なく、基本的には主人公とヒロインのみと言っても過言ではありません。また、理華シナリオでは鏡子は出て来ませんし、鏡子シナリオでは理華は顔を見せません。なので完全に主人公とヒロインの2人だけで物語が進行していきます。にも関わらず、中だるみしたり逆に描写が足りなかったりという事がなく、そういう意味での展開のまとまりという点は良好で、テンポよく読む事ができます。

物語がラストに向かうと、ヒロインの隠された問題やらが色々出て来るのですが、そこでちゃんと主人公は自分で問題を解決しようと頑張ります。そう言う点もあり、全般に渡って、ポジティブで誠実な描写に好感が持てる主人公です。やはり主人公は物語の主人公であると同時に、読み手を物語に誘う案内役ですから、読み手が共感しやすいというのは、大事な要素だなと思いました。

理華シナリオのラストは、笑ってしまうくらい力技かつ恥ずかしい展開ですが、それがキャラと上手くハマっています。鏡子のシナリオは、先読みのし易さと展開がちょっと釣り合っていないところもありますが、なかなか読み応えあると思います。鏡子シナリオにおける、ラスト近くの主人公の行動は色々無茶過ぎる気がしなくもないですけど(笑)。

システムは不明です(YU-RIS? 吉里吉里?)。選択肢は序盤の1カ所のみですから難易度はゼロです。プレイ時間は2時間ちょっとというところでしょう。シリアスだけど、重すぎず読み心地の良い作品をお探しの方に、いかがでしょうか。

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