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夏祭りの夜には

夏祭りの夜には 準推薦
■制作者/小夜プロジェクト(ダウンロード
■容量/122MB

ある日突然両親を亡くしてしまった杜宮湊太は、田舎の祖父の元に引き取られる事になった。が、その祖父がとんでもないぶっとび爺さん。更に町外れで謎の少女に出会った湊太。新しい日常が幕を開けるが、夏祭りの夜に、事態は突然大きく動き始める。読み応えのある娯楽大作。

ここが○

ここが×

■私の心は夏模様

どうも最近レビューのペースが落ちがちです。肩肘張らずにもっと気楽に書いた方がいいんでしょうね。と言いつつ今回もかなりの長編のご紹介です。典型的な「娯楽大作」タイプの作品。最近、娯楽作品としてよりは「自己表現」としてのノベルゲームが多いようで、それはそれで意義のある事だと思いますが、やはり私は娯楽作品の方が好みですので、こういう作品に出会えると嬉しくなります。

冒頭は、いわゆるボーイミーツガール型で、出会った少女が特殊能力を持っている(具体的には、今作のヒロイン咲理は神の使者という設定です。最近作では「健二と幼木の精霊」がそういうタイプですし、「明けない夜が来る前に」も同じ系統の作品ですね。この作品も、出だしは非常によくあるタイプですが、そこで強烈なキャラクターの祖父、源吉が異色の存在として、舞台を引き締めて(?)います。

夏祭りの夜にはこの作品は、他にもキャラクターが個性派揃いです。ヒロインの咲理、友人の美葵、祭も個性的ですが、やはりじいさんに止めを刺すでしょう。中盤までは彼らのやり取りのどたばたぶりが縦横無尽に展開します。この手の「日常どたばた系」がお好きな方なら、序盤から楽しめるでしょう。キャラクターバランスもなかなか良いと思います。

が、反面中盤までがとにかく冗長で、会話にも無駄が多く、人によっては途中で付き合いきれなくなるかも知れません。一応咲理がヒロインなのですが、特に恋愛描写に振った描写がある訳でもなく、ただひたすらどたばた状態なので、前半からも後半の展開への伏線をそれとなく張るとか、前半は恋愛描写の進行で引っ張るとか、何かあってもよかったのではないかと感じました。

そして後半。タイトルの「夏祭りの夜」に突然それはやって来ます。そこまでがかなり長いので、そこに行くまで挫折してしまう人がいるかも知れませんが、中盤からの展開はかなり劇的で、緊張感も高まりますので、キャラクターが気に入れば読み進める価値があると思います。ただ、中盤の展開は本当に突拍子もなく、いきなり来るので、私も「え!?」と固まってしまいましたが……。

この中盤以降の展開について詳しく書いてしまうと面白くないので、ここでは触れませんが、1つだけ書きますと、せっかく前半で主人公を食うほどの活躍をした源吉じいさんが、何だかちょっと「無駄な活躍」になってしまっている気がするのは気のせいでしょうか(汗)。源吉じいさんの見せ場が、物語的には何だか、あってもなくてもあまり変わりがないような気がしてしまうんですよね。せっかく良いキャラなのに、ちょっと惜しまれます。

それと、物語が後半に進むに従って、祭が次第に立ち位置を失っていっている感もあります。ヒロイン級のキャラが咲理、美葵、祭と3人いる訳ですが、立ち位置の関係から、祭はいっそ男性の友人にした方が収まりが良かったかもしれません。

最後は、展開的にはお約束ではあるのですが、場面に応じての台詞の組み合わせ方、それに演出が上手く、かなり感動できるラストシーンに仕上がっていると思います。実は選択肢が皆無のこの作品、最後の最後で1つだけ「究極の選択肢」が来ます。その選択肢でノーマルエンドっぽいものとトゥルーエンドっぽいものに分岐します。ノーマルでも十分綺麗な終わり方ですが、トゥルーの後にノーマルを見てしまうと、言い様のないわびしさを感じますので、最後の選択肢には気をつけてください(笑)。「夏祭りの夜には」というタイトルの意味は途中で分かりますが、そのタイトルに見事帰って来るラストシーンが綺麗です。

ツールは吉里吉里で、プレイ時間は5時間弱というところ。上に書いたように選択肢はラスト間際の1つだけです。前半が冗長すぎるなどの気になる点はありますが、「娯楽作品」としては文句なしです。読んで素直に「楽しかった!」と思えるハッピーエンドを、是非ご覧下さい。

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