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Love Song

Love Song 準推薦
■制作者/alpha(ダウンロード
■容量/35.8MB

アムルは、方向音痴を逆手にとって(?)ギター1本で世界を旅して回るミュージシャン。ある時アムルは、またも道に迷ってある山小屋にたどり着く。そこにいたのは、人を殺す事を喜びとする殺人鬼だった。殺人鬼に「愛」を教え込むための、アムルの奮闘の日々が始まる。

ここが○

ここが×

■この歌あなたに届けます

今まで3回作品を取り上げている、alphaさんの作品。時期的には「君の道、僕の道」と「左前の彼女」の間に公開された作品ですが、作風は随分違います。メインライターさんが違うようですが、他の作品が全て現代の恋愛物語であるのに対し、この作品は舞台がちょっとファンタジー風で(祭りの時に村長を呼ぶのが「田中」さん、ってのが大いに謎ですが)、作品説明だけを読んだら、「一体どんな物語なんだ?」と思われるかも知れません。

この作品は、いわゆる「ボーイミーツガール同居型」で、主人公アムルはヒロインであるルゥと一緒に暮らすのですが、他の同様な作品と違い、この作品は主人公がヒロインの家に転がり込むというところが新しいです(笑)。そのヒロインがまた、ただの人間ではなく「殺人鬼」という設定。なので、アムルはルゥとの初対面でいきなり殺されかける、という凄い展開。

Love Songそんな2人が、「家族ごっこ」をやるという事で同居し始めます。こういう感じの作品は他にも「おためし、かのじょ」というのがありましたが、こちらは「お試し家族」が始まってすぐに、殺人鬼であるルゥは、実は言うほど悪い奴じゃなく、むしろ結構いい奴である事が分かってきます。私としては、ここでもう1つ2つトラブルがあっても面白かった気もしますが。

この前半の展開を安直と見るかどうかは読む人次第だと思いますが、しかしこの前半があるからこそ、後半のちょっとショッキングな、とある過去回想がもの凄く効いていると思います。個人的には、その辺りを含めてルゥの過去、あるいはヒナやミリアについての描写がもうちょっと描かれていた方が、物語全体の説得力が増していたようにも思えますが、この尺での物語の「流れ」という事で考えれば、バランスといいテンポといい、申し分ない出来映えであると思います。

シナリオもですが、文章もとんとーんと進んで快適に読めます。主人公の方向音痴ネタが少し極端な気もしますが(方向音痴なので流しのミュージシャンになるって、どういう事だ(笑))、ちゃんとある意味での伏線になって物語にも生かされている事ですし、いいんじゃないでしょうか。朝から生でクマを食べるのだけはどうかと思いますけど(笑)。

さて、この作品はタイトルからも、そして主人公が流しのミュージシャンである事からも想像がつくように、音楽が物語の鍵です。実際、要所要所で主人公のアムルはギターの弾き語りをしたりするのですが、ここには演出にもう一工夫が欲しかったように思います。一工夫と言っても難しい事ではなく、雰囲気にあったギターのBGMを流すだけでも、かなり違ったはずです。

また、ラストにかけては、先読みができる展開ではあるものの、なかなか良いシーンを見せてくれます。ここも演出に何かあれば、同じシーンの破壊力がもっと増したような気がします。上で、キャラの過去に関する描写がもっとあればという事を書きましたが、そこらも含めて、もう少し長い尺で読んでみたい物語ですね。こういう事を思うのも、短編作としてこの作品がよく出来ているからだと思います。

途中、かなりアレなシーンも出て来るんですが、ラストは非常にいい感じにまとまるハッピーエンドです。殺人鬼がそう簡単にハッピーエンドになっていいのか、という気もしますが、私はそういう現実路線よりは、さわやかな読後感の方を優先しますので、これで全然問題ありません。

ツールはYU-RIS。選択肢はなく、プレイ時間は40分くらいでしょう。殺人鬼がどうのこうのというストーリー説明で、陰惨なサイコホラーを想像していると、良い意味で裏切られる、普通のハートフルストーリーです。普段こういう物語をあまり読まない人も、楽しめると思います。

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