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ヨヒトドラ

ヨヒトドラ ■制作者/Little Lizard(ダウンロード
■容量/34.6MB

記憶を失った少女マフは、荒れ地で重傷を負ったドラゴンを見つけた。マフはそのドラゴン、ムシュのために自分の体を貸して、首都を目指す事にする。たどり着いた街で、マフとムシュは訳ありの少年と出会うのだが。ファンタジー世界を舞台にした、冒険風短編ノベル。

ここが○

ここが×

■旅のお供は二頭龍

ファンタジー世界を舞台にしたノベルゲームは、物語としては作りやすい気がしますが(何でもありですからね)、意外と少ないのは、立ち絵その他で世界観を整えるのが難しいからでしょうか。それを言えばSFだって難しいと思いますが、その意味ではこの作品はとても上手く行っていると思います。タイトルが不思議ですね。「ヨヒトドラ」のご紹介です。

冒頭で、主人公の少女マフが、手負いのドラゴンムシュに体を貸すという展開になるんですが、ムシュは別にマフの行動を制御できる訳ではなく、その上自分では自由に動き回る事もできません。何とも不自由ですが、このお陰でムシュは重傷なのに命を落とさずに済んでいるという設定。そして旅先の首都で訳ありな少年ディンと出会い、中盤以降は彼も行動を共にする事になります。

ヨヒトドラこの作品、プレイ時間は1時間ちょっとですから短編の部類に入ると思いますが、その割に登場人物が多いです。主立った登場人物だけでも、6人。にも関わらず、どの登場人物も埋没する事なく、きちんと個性を主張しているのはお見事と言えましょう。女性キャラは主人公のマフ1人ですが、男女バランスの悪さを感じる事もありません。これは、ドラゴンという特殊な種族で、かつ「体を貸している」という特別な立ち位置のキャラである、ムシュによるところが大きいと思います。その意味で、この作品のキャラクターの扱い方はとても上手いと思います。ムシュの、保護者を気取っているのに手を出せないもどかしさ、みたいなところが面白いですね。

ただ、途中で登場する訳あり少年のディンが、その悪行(?)の割に、心変わりしたりマフにひかれたりするのが急すぎるので、ちょっと違和感を覚えなくもありません。まあ人の心なんてすぐ変わるものではありますが、だったら最初あそこまで悪い奴に描く事もなかったような……。

それと、この作品はその長さの割に、えらく盛り込まれた要素が多いです。マフが記憶を失っている理由とか、ディンの過去とか、ドラゴン同士のあれこれとか、後半に登場する魔術師のどうのこうのとか、思いつく限り盛り込んだみました、という感じです。

もちろん、たった1つのアイデアだけで短編を作ってみました、みたいなのに比べると、その心意気やよしではあるんですが、要素がどうも消化しきれていないというか、「単なる一設定」で終わってしまっている要素が多いように感じ、ちょっともったいないような気がします。マフの生い立ちにしても、ドラゴンたちやディンの過去にしても、もっと掘り下げればより話が面白くなった気がするのですが。せめて、物語の焦点をどれか1つに絞り込んだ方が良かった気がします(マフとディンの関係なのかとか、ドラゴンたちなのかとか)。

その意味で、今作はもうちょっと長めの尺で読んでみたかった作品ですね。ラストも、かなり緊迫感のある展開をしますから、もっと引っ張っても良かったのではないでしょうか。終わり方も、ハッピーエンドなのか何なのか、イマイチ釈然としませんし。ただ、この尺で多彩な要素を盛り込んで、短いにも関わらず濃密な読み応えがありますし、そこは作者さんの意気込みを評価したいな、とも思います。

最初にも書きましたが、この作品は背景画像とかBGMによる、世界観の演出がとてもよくできていると思います。BGMの選曲もいいですし、背景画像の加工がまたとても雰囲気を出しているんですよね。ムービーや歌も演出ですが、そういう大げさな演出だけでなく、ファンタジーものって、こういう細かい演出が大きく印象を左右するんだな、というのが実感できます。

ツールはLive Makerで、選択肢はなし。クリアすると3本のおまけが読めるようになり、全部読んでしめて1時間ちょっとというところでしょう。ほんわかした立ち絵と個性的なキャラクターで、楽しい一時を過ごせるファンタジー作品です。

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