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コスモス

コスモス ■制作者/Pastel Cats(ダウンロード
■容量/8.94MB

放課後、待ち合わせをして帰途につく幼馴染みの男女。毎日顔を合わせては他愛のない話をしていた2人だが、ずっと続くと思っていた2人の、そんな関係もやがて終わりを告げる日がやってくる。ラストシーンで直撃する切なさに胸が痛くなりそうな、短編恋愛ノベル。

ここが○

ここが×

■秋桜に少女の純真をのせて

ここのところ、ずーっと「立ち絵つき」の作品が続いていましたが、立ち絵のない作品には、それはそれで絵がある作品にはない良さがあります。絵でごまかせませんから、文章力や描写力は必須です。なので短編でも案外読み応えがある作品が多いのです。ここのところ立ち絵のない作品を狙ってプレイしていたんですが、目にとまったのがこの作品。

この作品は、いわゆる「幼馴染みすれ違い恋愛もの」です。主人公の年齢は違いますが、「雨ではなく、雪でなく」がそんな感じでしたね。この手の作品は、下手をすると読後感がどうにも後味の悪いものになるんですが、この作品は後味の悪さを上手く消して、それを余韻に変える事に成功していると思います。

コスモスそれは、主人公達が高校生(または中学生?)だからという事もあるでしょう。また、この作者さんの文章も大いに寄与していると思います。語りすぎず、さりとて端折りすぎず、描写が過不足なく適度です。文章についても同じで、捻りすぎず、かと言ってストレートすぎず、こちらもほどよい塩梅。立ち絵がないノベルゲームって、ともすれば文章を捻り過ぎてしまう傾向がなくもないんですが、この作品の文章は大変好印象です。

ラストシーンの独白までは、よくある話なんですが、ラストに至って「え? ちょっと待てどういう事?」となり、私はもう一度読み返してしまいました。そしてとあるシーンで、「ああこの時のこれか!」となった次第。うーむ、このすれ違いは切ないです。切なすぎて、人によっては理不尽に感じるかも知れないほど(笑)。

ただあのラストの独白は、男の子が「すず」ではなく「桜」へ向かう原因を、(非常にさらりとではありますが)明らかにしている訳で、その意味では、あのラストシーンがあるからこそ、後味の悪さを解消して、この作品ならではの読後感を生んでいるとも言える訳です。あのラストがなければ、よくある普通の恋愛ものという感じですから、その意味であのラストを付け加えた作者さんのセンスは大したものだと思います。

とは言え、物語としてはもう少しどこかに「落としどころ」が欲しかったような気がしなくもありません。男の子は、桜と上手く行っているようには見えず、女の子は「自分と関わるな」なんて言ってしまって、更にあのラストシーンなので、要するに「登場人物全員が、誰も幸せになっていない」気がするんですよね(汗)。ハッピーエンドとは言えないオチでも、どこかに救いを見せて欲しかった気がします。せめて、誰か1人だけでも、読者にも明白な幸せを味わわせてあげても良かったのでは。

この作品はテキストのみで、音楽もごくシンプルです。もう少し演出とか音楽に凝ろうとすればいくらでも凝れるでしょうが、あえてシンプルにした事で味わいが深まっているような気がします。これでBGMに凝って、立ち絵がついたりなんかしたら、全く別の味わいになるでしょうから。そう言う意味で、立ち絵のないこういう作品の存在は、貴重だと思います。

ツールはLive Makerで、プレイ時間は15分程度。選択肢はありません。15分ですが、かなり強い印象を残してくれる作品です。15分で切なくなりたい方は、是非読んでみてください。ラストまで読んで「え?」となった人は、どうぞ私と同じく、もう一度最初から読んでみてください(笑)。

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