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灰の降る街~a tale of monochrome~

灰の降る街 ■制作者/渕乃間ハイル(ダウンロード
■容量/204MB

舞台は桜島で知られる鹿児島県鹿児島市。灰の降る街鹿児島で、加持亮は結婚が決まった知人のため、写真を使って動画を作る作業をしていた。その写真の中の思い出せない女性は誰なのか。複数の登場人物や時間が絡んでだんだん1本の物語になっていく、オムニバス形式の短編ノベル。

ここが○

ここが×

■南の街はモノクローム

フリーのノベルゲームで、実在の街を舞台にした作品はそう多くありませんが、この作品の舞台は鹿児島です。鹿児島と言えば桜島。という訳で、日常的に街に火山灰が降る街での物語。灰が降るからどうなんだと言われそうですが、途中では天気予報で灰がどの方向に飛ぶと言ったような事を言う、という描写もあり、独自のローカル性を感じさせてくれます。

そしてこの作品は、1話5分で読める短編が全部で8話。最初は、1話進む度に登場人物も時間設定も変わって、「??」となりますが、読み進めて行くと実は物語がつながっているという事が分かっています。手法としては「こいいろ」と同じです。と書いてしまうと「こいいろ」のネタバレになってしまいますが、さすがにあの作品の登場から大分経つので、お赦しを。

灰の降る街全8話の物語は、しょっちゅう時間設定が移動します。この理由も途中で分かりますが、最初はちょっと混乱するかも知れません。ま、別に全てを把握しながら読む必要もないので、あまり気にする必要はないでしょう。最初こそ静かに始まるのですが、途中であるキャラ(スクリーンショットに出ちゃってますが(笑))が登場してから、物語が俄然とんでもない方向へ動き始めます。

途中のあるキャラもかなり唐突ですが、「うわさもん」にしても「力で戦う」にしても、一瞬「え、なんだって?」と思考が停止するほどの荒唐無稽ぶりです。荒唐無稽ぶりではつい先日ご紹介した「chaos pastel orange」と良い勝負です。さすがにちょっとぶっ飛び過ぎなんじゃないか、と思わなくもないですが、何せ1話5分の超短編ですから、深く追求する前には次の話に行ってしまってます(笑)。こういう「トンデモ系」のお話は、短編の方が使いやすいのかも知れません。

ただ、テキスト表示にかなり頻繁にウェイトがかかる上、日時表示もクリックでスキップできないため、ちょっとプレイしていてストレスがたまるところがあります。テキスト表示速度を速くしても、あまり快適になった気がしないというのが何とも(汗)。ま、基本的には一度読んで終わりの作品なので、そこらはちょっと我慢するしかありません。

謎の巫女さんキャラであるルカが登場してから、時間設定が次々移動する理由が明らかになり、謎が解け始めます。確かに設定に「何じゃそりゃ」感はあるのですが(特に「うわさもん」が唐突すぎる)、謎の解け方自体は綺麗で、疑問となるところが残らないのはよいところです。また、「灰が降る街」であることを上手く利用したラストシーンの見せ方が綺麗です。こういう風に地方の特色を生かせるのが、架空都市ではなく実際の街を使うメリットかも知れませんね。

ラストですが、絵に描いたようなハッピーエンドという訳ではなく、なんともすっきりしないものが残ります。読んでいる身としては、せめて2人を再会させてあげたかったような気がしなくもないのですが、ある意味そういう「もどかしさ」を感じさせるのが目的なのかな、という気もします。だとすれば、あれはあれで1つの終わり方としてありなのでしょう。ただ、こういう視点が頻繁に変わり、またそれを売りとする物語ですから、メインが誰なのかが結局よく分からないまま終わってしまった感じはします。

展開とか設定はある意味支離滅裂なのですが、1話1話が短くパワーで押し切ってしまっているため、ツッコミを入れる暇もなく、素直に楽しめるのではないでしょうか。ツールはLive Maker。選択肢はなく、プレイ時間は45分くらいです。終わったらこれまたぶっとんだおまけシナリオが読めるんですが、それを読んでみると実はルカこそがメインキャラなのではないか、と思えてしまう不思議(笑)。肩の力を抜いて楽しんでみてください。

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