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星の砂時計

星の砂時計 準推薦
■制作者/直弥(ダウンロード
■容量/45.9MB

優希と沙希は、仲が良い高校生の兄妹だが、血は繋がっていない。クラスメートがうらやむほどの仲良しだったが、妹の沙希にはなんだか秘密が。そしてどうやら沙希は優希に想いを寄せているらしい。禁断の恋、成就なるか。そして沙希の秘密とは? 短編妹恋愛ノベル。

ここが○

ここが×

■星は流れて時に変わる

出ました、「妹もの」。古くは「Silence」、あるいは「あの丘の上まで」辺りでしょうか。なんとなく、妹ものって病弱ものとの組み合わせが多い気がしますが、今作のヒロインである妹の沙希も、病弱とまでは言いませんが、ちょっとそういう点で問題を抱えているヒロインではあります。妹と病弱って、相性のいい属性なんでしょうか。

優希と沙希は、どうやら描写を見るところでは2人暮らしの、血の繋がらない高校生の兄妹。妹の沙希はあからさまに優希への好意を示す行動をとり、クラスメートからも冷やかされる始末。そんな日常からスタートしますが、実は沙希には秘密が……というような出だしです。この手の作品でよくあるタイプのつかみですが、テンポがいいのですぐに物語に入り込めるでしょう。

星の砂時計物語を支えるテーマは案外多く、沙希の過去がどうとか、沙希の心の問題とか、沙希と優希の関係とか、いろいろです。短い中でそれらを色々盛り込んで、しかも破綻なくどの問題もきちんと解決させてまとめているところに、作者さんの筆力の高さを感じますね。

ただ、この短さ(30分かからないくらい)ですから、ちょっと盛り込み過ぎにも感じてしまったのは事実です。途中、事実をよく把握できずに優希が混乱するシーンがあるんですが、読んでいる私もそこは一瞬考え込んでしまいましたし(笑)。前説というか、前提となるイベントが1つあるだけでも、かなり読んだ時の分かりやすさが違ったようにも思います。

しかし、登場人物の心の動きは上手く描かれており、メインキャラはわずか2人(3人?)ながら、人間模様、恋愛模様としては、短いながら読み応えのある作品に仕上がっています。反面、サブキャラに関してはもうちょっと物語に絡ませてあげてもいいんじゃないかと思いました。そういう意味では、凝った要素の点についてもそうなのですが、短編である事を生かした作品というよりは、もう少し長い尺で読んでみたかった物語ではあります。

とは言え、心情描写がしっかりしているので、展開に説得力があります。短編でも(短編だからこそ?)こういうところをしっかりやるだけで全然違うな、と感心しました。義理の兄妹の恋愛ものという、「禁断のテーマ」なのに、嘘っぽくなっていないんですよね。ネタで終わらせずにちゃんとした恋愛ものに仕上がっています。

タイトルの「星の砂時計」の意味も、もちろんプレイしていけば分かるんですが、せっかくの印象的なアイテムなのですから、作中イベントでもう少し印象的に活用しても良かったのではないかという気がします。これもそういうイベント(回想でも)を1つ入れるだけで、かなり違ったんじゃないかな、と。もう1つ。心情描写はよくできているんですが、生活描写にちょっとリアリティがないというか……。

そういう意味では、クラスメート達の存在は、効いているとも言えますが、何せ自宅に誰もいないっぽいので、そこにプラスアルファの描写があれば、物語の奥行感みたいなものが増したような気がしますね。

ツールは吉里吉里。選択肢はなく、プレイ時間は20~30分くらいです。短編なんですが、短いにも関わらずかなり満腹感を感じさせてくれます。ラストも綺麗なハッピーエンドで読後感もよく、プレイしての満足度はかなり高い作品です。妹属性の方もそうでない方も、ぜひどうぞ。

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