Seeker～月夜のリング
■制作者／志麻サクラ（ダウンロード）
■容量／2.98MB
高校生の明石慎太郎は、ある日学校に忘れ物をしてしまった。それがないと明日宿題が提出できない。仕方なく夜の学校に向かう慎太郎の目の前に、幼なじみの長峰千里が。彼女も一緒に行くというが。果たして夜の学校で何が起こるのか。エンディング数21、気軽に楽しめるマルチシナリオノベル。
ここが○
- 長さも適度で、バラエティに富んだ分岐が楽しめる。
- 容量コンパクト。お気軽にダウンロード。
- 無駄な選択肢がなく、ストレスなく読める。
ここが×
- 音楽はイマイチかも。
- 緊張感が薄い。もうちょっと雰囲気出して欲しかった。
- BLネタにはひいた。
■夜の学校は幽霊だらけ
超大作の合間には、コンパクトで手軽に楽しめる作品もプレイしたくなってきます。今回はそんな、「コンパクトで気軽に何度も楽しめる」作品をご紹介します。立ち絵等がない、シンプルなコマンド選択式ノベルです。作者は女性の方のようです。確かこの作者さんは「雨の日には白い傘を」という作品を作られていたと思います。その作品もマルチエンドノベルだったんですが、あまりにコンパクトすぎ、シンプルすぎて楽しむところまでは行きませんでした。今作は、同系統のマルチエンド形式ながら、適度なボリュームでなかなか楽しめます。
夜の学校で、しかも幽霊ものです。こう書くといかにも「かまいたちの夜」とか、あっち系統のホラーとかサスペンスっぽいですが、この作品にはホラーっぽさは微塵もありません。というか、主人公やヒロインが死んでしまうエンディングもあるというのに、全然怖くありません。ジャンル不明です。妙にほのぼのとした雰囲気ですし（笑）。もうちょっと緊張感を煽っても良かった気もしますが、まあこう言う方向性もありかも知れません。逆に気軽に読み易いとも言えます。ホラーっぽいのがお好きな方だと、ちょっと物足りなさを覚えるでしょう。
選択肢はたくさん出て来ますが、無駄な選択肢がほとんどなく、多くの選択肢は「選択する事でシナリオが分岐する」タイプなので、あまり深く考えずにマルチエンドを楽しめるのは嬉しいところ。ストーリーは、奥が深いとか伏線が巧妙とか、そう言うタイプではなく、雰囲気を気軽に楽しむものです。このくらいの長さ（１プレイ20分程度）なら、かえってその方が良いかも知れません。
ただ、素材使用の音楽はちょっと選曲や使いどころがイマイチな感があります。自動作曲ツールでも使ったかのような、「これは音楽なのか？」という微妙なものもあったりしますし。舞台が夜の学校なのですから、ここにはもう少しこだわっても良かったんじゃないでしょうか。特にこの手の「閉鎖空間での物語」の場合、音楽はかなり作品の印象を左右するポイントにもなるんですし。
あと、BL（Boys Loveの事です）ネタは、かなりひきました（汗）。まあ、エンディングの１つにも関わりますし、あれくらいライトなネタならありかも知れませんけどね。それでも、ああいうネタはプレイヤーの性別を選ぶなと、改めて感じました（苦笑）。それと、一部のエンディングが完全に運任せってのもなあ（笑）。運ではなく、選択肢で決められるようにして欲しかったですね。そう難しくはないと思うんですが。
この作品は、意気込んでプレイするようなものではありません。ホラーを求めてもサスペンスを求めても緻密なストーリーを求めても、どこか今一つ足りない感じです。ですが冒頭にも書いた通り、大作の合間の息抜きのつもりでプレイすれば、思った以上に楽しめると思いますよ。全21種類のエンディングは、タイトルでリストが見られるのも親切です。さくっと全エンディング制覇を目指してしまいましょう。