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Doreamy

【Doreamy】 ■制作者/PAL(ダウンロード
■容量/3.67MB

秋山友里、15歳。生まれつき盲目の彼女は、治る見込みのない難病でずっと入院生活を送っていた。もはや歩く事もできなくなり、1日中ベッドの上で生活する彼女の部屋へ、ある日やたらと元気のいい新人の医師がやって来る。カズマと名乗る陽気なその医師と、友里との交流を描いた短編ノベル。

ここが○

ここが×

■君に会いにきたんだ

私は、仕事柄「病院もの」の物語は結構好きです。既にご紹介した作品にも名作「奇跡の外科医に」を始めとして、「call angel voice」「雪降る街」「call sacrifice heart」など、個性的な作品が色々あります。この作品も個性的で、個人的にはとても印象に残った作品でした。ちなみにタイトルを見て「Dreamyの間違いじゃ?」と思われる方もいらっしゃるかも知れませんが、「Doreamy」で正解です。

病院を舞台にすると、ドラマチックな事件は起こし放題になるんですが、描写がリアリティを欠くと、もの凄く陳腐になってしまいます。その点をこの作品はどう解決しているかというと、まずドラマチックな事件が起こりません。その代わりに、医学的な描写をほとんどカットしています。実際、描写のほとんどは青年医師カズマと盲目の少女友里の交流に費やされています。これが上手くハマっており、水彩画のような色調のとても美しい1枚絵とも相まって、独特の温かい雰囲気の作品となっているのです。

もっとも、とても綺麗な1枚絵が出る反面、背景や立ち絵は皆無なんですが、まあ主人公が盲目の少女ですし、それもありかも知れません。システムはYuuki! Novelです。なので、読み返しなどは当然できません。まあこれはしょうがないですが、とても良い雰囲気の文章ですし、読み返したくなるポイントも結構あったので、ちょっと残念な点です。

登場人物は、ほとんどカズマと友里のみです。また、友里は歩けないので、舞台もほとんど病室に限られています。が、2人のやり取りがとても良いですね。過剰に深刻でなく、どこかコミカルで、それでいてとても温かいです。舞台が限られており、ほぼ2人のやり取りのみで話が進むのに、流れが滞る事がありませんでした。

さて、後半に物語はいきなり急展開を見せます。ところがこの急展開が、ちょっと「いきなり過ぎ」なんですよね。何の伏線も張られていませんので、私も「はあ!?」となってしまいました。加えて、展開がいきなり過ぎな上、ストーリーが盛り上がる前に、突如として物語が終わってしまうのです。物語の素性がとても良かっただけに、ちょっと惜しまれるところです。この物語は、20分くらいで終わりますが、伏線を巧みに張って、2時間くらいかけてじっくり描写したら、凄く良い物語になったんじゃないかと思います。

元々、この作品はボイスドラマの脚本用に書かれたそうですし、容量もかなりコンパクトなので、まあ仕方ない面もあるかとは思いますが、せっかくなかなか感動的なエンディングなんですから、せめてクライマックスくらいはもっと盛り上げても良かった気がしますね。ほんと、それくらい突然終わってしまいますから。もっとあの雰囲気を長く味わっていたかったというのが、正直な感想です。

とまあ、後半の展開にちょっと難があるのは事実なんですが、この作品が持つ独特の「温かさ」は、非常に気に入りました。この作者さんが書いた中長編作品を、是非プレイしてみたいですね。上にも書いた通り、20分で読めます。ちょっと時間が空いた時、ちょっとした感動、温かい気分を味わいたい方に、この作品をお勧めします。

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