そこに幸せある限り
■制作者／ステフ（ダウンロード）
■容量／69.3MB
鈴木義彦は高校２年生。気の合う女友達河本麻奈は、ちょっと気が強いお嬢様。その日も、登校時の麻奈とのいつものように他愛のないやり取りから１日が始まった。が、内気な少女野田沙紀が彼のクラスに転校してきてから、彼らの生活は少しずつ変わり始める……。テーマは「いじめ撲滅」、匿名掲示板2ch発祥のノベルゲーム。
ここが○
- ボリュームのあるシナリオ展開。
- 登場キャラの立ち絵や一枚絵が豊富。
- 分かり易いテーマのせいか、物語はだれずにテンポ良く進む。
ここが×
- 「いじめ撲滅ノベル」というより、普通の恋愛ノベルのような。
- 麻奈のキャラクターメイクはちょっと……。そして麻奈はエンドもかなり手抜き。
- 立ち絵の絵柄の統一感なし。Nscripterなのに既読スキップがなく不便。
■イジメ、カッコ悪い、よね？
普通、ノベルゲームというのは、そうそう明確に「テーマ」を全面に押し出したりはしません。テーマとはある意味、シナリオと密接に絡むものでもあり、作品の肝でもあります。作者さんとしては、そこは簡単に明かしたくないというところでしょうか。そんな中、作品のテーマをあえて全面に押し出した作品が、この「そこに幸せある限り」です。
この作品は、巨大掲示板群２ちゃんねる発祥のようです。そう言えば「NETANNAD」もそうでしたね。全く統一感のないキャラ立ち絵を見ると、その辺りがうかがえます。とは言え、キャラ立ち絵は豊富。１回しか登場しないキャラにまで立ち絵があるのは、単なる作者さんの趣味でしょうか（笑）。フリーウェアとしては見た目のクオリティは、なかなかのものだと思います。しかし、この作品で何よりびっくりしたのは、音楽。私の作曲した曲ばかりです。ここまで全編に渡って私の曲を使ってくださった作品は、初めてですね（笑）。
さて、ではそのシナリオはどうかというと、悪くないと思います。テーマが「いじめ」という事で、もっと殺伐として陰惨なシナリオを想像していたんですが、案外そこらはさっぱりとした表現で（それなりに重々しいですが）、どちらかというと「ちょっとシリアスな恋愛ノベル」という感じです。そこらが、「いじめ撲滅をテーマに掲げているわりに軽い」と、批判対象にもなっているようですが、まあ「ゲーム」ですから、こう言うのもありなんじゃないでしょうか。読んだ印象は悪くありません。シナリオそれ自体の評価はともかく、この作品でイジメが撲滅できるかと言われたら、それはどうなんだろうという気もしますけど（汗）。
ただ、沙紀シナリオラストへの繋ぎなど、展開がかなり荒っぽく、また色々と盛り込み過ぎてごった煮状態になっているのは気になるところです。何とか綺麗に終わらせようと頑張ってるのは分かりますし、それなりに綺麗に終わるので、終わった時にストレスを感じる事はないんですが、裏ヒロインの麻奈を始めとして、キャラの言動（というか行動の動機？）には「それは違うだろ」とツッコミを入れたくなる事多数です（笑）。
また、メインヒロインの沙紀は割とちゃんとした終わり方ですが、裏ヒロインの麻奈の終わり方がかなり適当なのはいかがなものかと（苦笑）。また、麻奈はあの口癖（「～ですの」とか）は、シリアスなテーマを考えたらもうちょっと普通にした方が良かった気もします。「現像してくる」などの、分かり易すぎる手がかりも必要なかった気がしますね。
システムはNScripterなので不満があろうはずもないんですが、何故か既読スキップがないのが気になりました。まあ、繰り返して読むタイプの作品でもないですが……。選択肢もほとんどないですしね。選択肢はほとんどないだけに、エンディングに直結しますんで、選択肢を見たらセーブしておきましょう。
展開はちょっと荒っぽくてまとまりに欠けますし、ツッコミどころも多いと言えば多いんですが、物語自体はそれなりにまとまっているし、展開に起伏もあるため、退屈せずに気軽に楽しめる作品だと思います。プレイ時間は３時間～３時間半。テーマにこだわらず、サクっとプレイしてみてください。