■製作者/U.C(ダウンロード)
■容量/2.74MB
ある雨の日、主人公の住むアパートに、隣の部屋の女子大生が訪ねてた。主人公と同じ大学に通う彼女は、猫を拾ったのでしばらく預かってくれと言う。なんとヒロインがフルボイスでしゃべりまくる、短編恋愛ノベル。
以前に取り上げた「病弱な貴方に捧げる夜想曲」と同じ作者による作品です。前作も絶賛したわけではないんだけど、フリーウェアでは凝ったCGばりばりの、いかにも「同人です」みたいなのより、こういう「手作り感」溢れる作品の方が好みだったりします。背景は写真を加工してます、「病弱な」では加工しすぎだったんですが、今回は油絵っぽい雰囲気もあって悪くないです。人物はシルエットです。ぱっと見の雰囲気はなかなか良好です。
この作品は、選択肢はありますが基本的には(応用的にも)一本道です。その選択肢に、いきなり「飛鳥五郎という男を殺したのは貴様だな!」なんてのがあるあたりがあれですが(笑)。プレイ時間は30分ほどで、短編恋愛ノベルという感じです。ただ、ヒロインがちょっと癖が強いというかアクが強いというか、少しわがままさを強調しすぎているところが鼻につきました。そこさえ我慢できれば、ひねりはないものの、なかなかほのぼのとしたタッチのシナリオが楽しめると思います。
さて、この作品のウリというか最も驚いた点は、「ヒロインがフルボイスでしゃべる」というところ。ゲームを開始するといきなり「午前2時の迷宮」としゃべって驚かせてくれましたが、本編でも全部の台詞をしゃべってくれます。もちろん、プロの声優さんではなく素人の演技だと思われますが、これがなかなかうまくて感心しました。そして、多分同じ人によると思われる「猫の声」も、良い味を出してました。下手に声を入れてしまったばっかりに、凄い事になってしまったゲームなども存在しますが(笑)、この作品については入れて成功だと思います。
ただ、一点非常に気になったところがあります。文章自体はフリーノベルにありがちな押し付けがましさやくどさがなく、また過剰な修辞麗句ばかりに辟易することもなくて好印象なんですが、やたら顔文字とか「(汗)」とかの表現を乱発してます。これはちょっと、というかかなりいただけません。小説じゃなくて掲示板とかチャットならそれもありでしょうけど、こういう文章には非常にそぐわない表現のように感じます。
あとは、音楽ももう少し何とかならないでしょうかねえ。いえ、私がやかましいだけかも知れないですけど。それでも、フリー素材などを上手に利用すれば、もっと全体の雰囲気が良くなると思われるだけに、惜しい点です。
短編ですが、小じんまり丁寧に作られていて、短いなりに充足感を得られる一作です。フルボイスの割りに容量もコンパクトですし、軽くプレイしてみる価値はあるのではないでしょうか。