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本当の願い事

【本当の願い事】 ■制作者/AKIRA(ダウンロード
■容量/16.8MB

高校生浅井悠一は、遅刻しない日はないほどの遅刻魔だった。ある日、遅刻の罰として図書室の整理をするよう担任から命じられ、図書委員の渡辺渚と共に作業に入るが、渚がふと話題にした「願いが叶う本」。本当にそんな本が存在するのだろうか? エンディング5つ、クールでシニカル、ちょっとブラックな、学園ノベル。

ここが○

ここが×

■願い事は何ですか

面白い雰囲気の作品です。作者さん自ら「ネガティブ」と語ってしまってますが、ネガティブでシニカルでブラック。間違っても「ほのぼの楽しい」作品ではありませんが、独特の雰囲気は秀逸。一風変わった学園ノベル「本当の願い事」をご紹介です。

作品内では、「願いが叶う本」というのが登場し、この本を巡って物語は進みます。こう書くと、何だかファンタジックな物語のようですし、「一見ファンタジック」な展開をするシナリオもあるんですが、全然ファンタジックな物語ではありません(汗)。まず、主人公とヒロインが、とても感情移入できそうなタイプではないのです。有り体に言えば、「どちらも嫌な奴」。特に渚シナリオでは、渚の独白がもう全編毒にあふれていて、読んでいて不愉快になるほど。

なので、めでたく2人が結ばれるハッピーエンドに到達しても、「この2人が……?」という感想を抱いてしまいました(汗)。いえ、ハッピーエンドは、お話自体は良くできているんですよ? ただ、それまでの展開が展開で、キャラクターがキャラクターで、更に恋愛描写が非常に希薄なため、どうにも「唐突感」「取って付けた感」はぬぐえませんでした。

むしろ、全体を通しての出来で言えば、他のエンディングの方がまとまりがあってよくできています。ただ、これまたブラックでシニカルでネガティブなシナリオばかりなので、人によっては読みながら気が滅入ってしまうかも知れません。「ノベルゲームをやって、日頃の嫌な事を忘れて楽しい気分になろう」「他人の幸せは自分の幸せだ」と思っている方には、こちらのシナリオはちょっとお勧めしかねます。また、「願いが叶う本」が主題なのに、肝心の登場人物の「願い」に対する描写がイマイチ曖昧なので(特に渚の願いに対するバックボーンが描かれていないのはマイナス)、ちょっと物語が説得力を欠いています。

ただ、そこまで書いてしまうのも、この作品がキャラクターメイキングが良く出来ている上(そのキャラクターに親しみが持てるかどうかは、また別のお話ですが)、文章も非常に巧みであるためです。この、ちょっと退廃的でブラックなノリが合う人ならば、この作品は非常にツボにハマる事でしょう(私は、とにかくポジティブな物語が好きなので、残念ながら肌に合いませんでしたが)。

プレイすると、最初は浅井悠一視点の物語を読む事になります。途中1カ所現れる選択肢で、2つのエンディングを見る事ができます。その2つのエンディングだけだと、「???」なんですが、その後ヒロインである渡辺渚視点の物語を選択できるようになります。こちらは3つのエンディングがあります。きちんと選択していけば、ハッピーエンドに到達できます。このハッピーエンドは、非常に綺麗な恋愛オチになりますし、エンディングも素晴らしくまとまっています。それまでがそれまでだけに、個人的には上に書いたように違和感を覚えましたが、このエンディングがあるせいで、幾分作品全体の雰囲気が柔らかくなっています。

グラフィックスは、非常にクール。背景も一枚絵も素晴らしいです。このグラフィックスが、作品の雰囲気を形作っていると言っても良いでしょう。そして音楽。何と、ピアノ学習者なら誰でも弾くであろう「ブルグミュラー25の練習曲」の曲が、いきなりタイトルで流れます(確か「牧歌」だっけか。私も子供の頃に弾いた)。その他にもクラシックの曲もあれこれ出て来ますが、この選曲は良いですね。

プレイする人を選ぶ作品です。私は「凄く楽しめた」とはちょっと言い難いですが、ネガティブなノリの作品がお好きな方ならば、要チェックでしょう。ハッピーエンドのラストでの渚の戸惑った表情は素敵です。一風変わった学園ものをお探しの方、どうぞ。

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