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カスタードはあきもよう

【カスタードはあきもよう】 準推薦
■制作者/桜美林大学漫画ゲーム研究会(DL
■容量/35.3MB

アキアカネが舞う季節。その日日直だった小学6年生の直純は、授業が終わると帰りの会の司会を始めるべく、ランドセルを取りに行った。そんな彼を取り囲む幼なじみの亜希、図書委員の楓、スポーツ好きな穂乃華。小気味良い展開ですいすい読める、遊びやすいマルチヒロインの純愛ノベルゲーム。

ここが○

ここが×

■時に子供っぽく、時に子供らしく

ノベルゲームを作る場合、個人は個人で、サークルはサークルでそれぞれ強みがあるでしょう。個人の強みは小回りが効く事ですが、1人で何でもかんでもこなすのはやはり困難です。サークルの場合は才能が集まりますが、顔と顔を合わせて物を言える仲間でないと、制作がスムーズにいかない場合もあるでしょう。その点、大学のサークルは両者の利点を併せ持っていると言えそうです。この作品は、そんな大学サークルらしい良さが全面に押し出された作品。

作りは非常にストレートなマルチヒロインの恋愛ノベルですが、この作品が変わっているのは、舞台が小学校という事。なので、展開は言ってしまえば他愛のないものですし、主人公やヒロインの心情も、シンプルで大変分かりやすいです。正統派の、少々気恥ずかしくなるほどの純愛。

しかし、キャラクターが小学生であるが故に、それらのストレートさが素直に受け入れられる内容になっています。これが、同じ物語を高校を舞台にして作っていたら、主人公の鈍感さにいらいらさせられる箇所も出て来るでしょうが、小学生なら笑って許せます。「子供らしさ」と「子供っぽさ」を、上手に利用しているなと感じさせられました。物語ならではのファンタジー性と、物語を成立させるためのリアリティが、小学校という舞台を通して上手く融合した、丁寧な作りには好感が持てます。

ヒロインは3人で、1人30分あれば読めるでしょう。30分ですから、シナリオ展開も王道展開、ストレートでけれんのないものです。ですが、丁寧に作られているため物語としての満足度はなかなか高い作品です。意外な展開とか驚くオチが付く訳ではないのですが、安心感のある緻密な作り。既出の作品で言えば「Twin Love」と近いテイストを持った作品です。

ただ、3人のヒロインのどのシナリオも、基本的な展開が同じなんですよね。もちろん細かい箇所は違うんですが、大筋としては同じ。なので、1回目のプレイに比べると、2回目、3回目は少し満足感が弱まる感じがします。級友や先生を絡めた、少し変化球気味の展開があれば、かなり印象が変わったんじゃないかと思いますが。

また、一部で文字表示がおかしくなる箇所があります。亜希シナリオのラストで文字表示が妙になり、スクロールホイールの読み返しを使わないと読めない事態に。穂乃華シナリオの中盤でも同じ症状になりました。セーブしてからやり直したら治りましたが、セーブしてロードすると、遥か前から読み直す羽目に。それでいて既読スキップが使えないのは不便です。音楽や立ち絵など、凄く良い作りをしているだけに、こういう点がちょっと気になりました。ツールは吉里吉里ですから、実装は難しくないはずなのですが。

文章は主人公の一人称ですが、変な癖や嫌味がなく、とても読みやすいものです。3人のヒロインは幼なじみ、図書委員、バスケ少女と、まあステロタイプと言えばステロタイプですが、台詞のやり取りや描写は軽妙で、良いキャラクターメイキングだと思います。ただ、主人公がちと鈍感&モテ過ぎかも(笑)。まあ小学生だからありでしょうね。

短編なのですが、とても丁寧な作りで、ぱっと見から受ける印象よりも、楽しめる作品でした。テンポ、読後感共に良好で、短編のシナリオ作りのツボを押さえています。選択肢は1つしかないので、攻略は全然難しくありません。舞台が小学校という事で、食指が動きにくい方もいらっしゃるでしょうが、先入観を取っ払ってプレイしてみてください。

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