Sing Song
■制作者／ぽてと（ダウンロード）
■容量／109.9MB
瑞穂と優樹は仲の良い女子高生。そして２人の幼なじみ浩一。クラス替え、試験勉強、夏祭り。変わりなく流れる毎日を３人はいつも一緒に過ごしていたが、そんな毎日にいつしか少しずつ変化が現れ始めた。終始３人のやり取りで進み、どこか少女漫画風の雰囲気を感じさせる、正統派の長編恋愛ノベル。
ここが○
- 丁寧な描写とキャラ同士のやり取り。
- 青春全開の展開。
- 綺麗で一息つけるアイキャッチ。
ここが×
- あれれっと思っているうちに終わってしまうラスト。
- エフェクト等がちょっと遅めでテンポを損なっている。
- 時期を考えても、容量がちと大きめのような。
■正統派少女漫画風恋愛ノベル
この作品は少々古いです。公開年月日は2005年１月15日。なんと５年前。本来なら、50～60回目辺りでレビューに登場しているはずでした。が、ダウンロードして解凍して、フォルダーに入れたまますっかり存在を忘れていたという（汗）。改めてプレイしたので、ここにレビューを書く次第です。最新作をご紹介するばかりがレビューではありませんし、ちょっと前の作品をご紹介する事で、作品の再評価に繋がればと思います。
この作品、見た目は大変地味ですし、出だしもよくある「学園恋愛もの」です。ただこの作品が、いわゆるギャルゲータイプの作品と少し違うのは、「主人公が女性」という点です。主人公と、友人の女の子と、幼なじみの少年の３人が主な登場人物（というか、３人しか出てなかったような）。なので、全体の雰囲気はちょっと少女漫画風です。
その「少女漫画風」も、どちらかと言えば今風というより、一昔前の「正統派」という感じです。何をもって正統派とするんだと言われると困りますが、とりあえず本田恵子とか、あの辺りの感じという事にしておきます（そんなたとえ、分かる人いるのか？（笑））。
この作品は、主人公である瑞穂の一人称でテキストが進んでいくんですが、この一人称がなかなか上質です。よくある、「キャラ名『○○○』」なんてのが延々と並ぶという感じではなく、キャラ名が表示されないタイプ。台詞にキャラ名がくっつかないので、描写を丁寧にしないと途中で訳が分からなくなったり、あるいはテキスト描写の分を立ち絵に全部やらせてると、テンポが妙に悪くなったりするんですが、この作品はキャラのやり取り、描写のバランス、そのテンポが良く、快適に読めました。
物語としては、捻ったところは特になく、「いつまでも続くと思っていた日常が云々」という、過去に取り上げた作品では「S-H」辺りに近い雰囲気を持つ物語です。ただ、「S-H」の少年漫画風に対し、この作品はやはり少女漫画。過剰に羽目を外したりしない代わりに、妙に背中がこそばゆかったりします（笑）。どちらが肌に合うかは、これは完全に好みの問題でしょうね。
立ち絵は素材で、「私の黒猫」でも使われてましたね。この立ち絵がまた、独特の少女漫画風味に合っていたと思います。これが、恋ツク２の立ち絵だったりしたら、かなり雰囲気は変わっていたんじゃないでしょうか。とは言え、立ち絵が素材なので、浴衣とか水着のはずのシーンでも服装が変わらなかったりしますが、これはまあ贅沢というものでしょう。要所要所ではムービーを使ったアイキャッチが入ります。このアイキャッチが綺麗で良かったですね。
ただ、ラストへ至る展開は「あれれっ？」と思ってしまいました。展開がいきなりな感じですし、終わり方も妙に尻切れとんぼです。もちろん、ラストまでキャラ同士のやり取りは変わらず楽しめるのですが、最後は少しはぐらかされた感じで終わったのが残念でした。どうせなら、ラストまでお約束に徹して少し大げさ気味にドラマチックに盛り上げた方が、物語としては面白かったのではないかという気がします。
システムはNScripterですが、NScrのバージョンが古いためか、テキスト表示速度が変わらなかったりしますし、あとエフェクトがスローテンポで、場面によってはちょっとテンポを損なっている感がありました。それと、アイキャッチのムービーのせいか、容量が妙に大きかったりします。まあ５年前ならともかく、現在なら許容範囲でしょうか。
選択肢はなく、プレイ時間は３時間ちょっとだと思います。正統派長編少女漫画というノリの作品。ご存知なかった方は是非読んでみてください。キャラクター３人の微妙な距離感が面白い作品です。