浮猫亭
■制作者／ゆむ（ダウンロード）
■容量／17.6MB
中学校を卒業したばかりの少女、柊海琴（ひいらぎ・みこと）は、卒業旅行の一人旅で、人より猫の数が多いという、とある坂のある街へやって来た。休憩しようと立ち寄った「休み場」で、海琴は１匹の猫と出会う……。猫と人のちょっとしたふれあいを描いた物語。
ここが○
- 猫好きにはこたえられない、可愛らしい猫のイラスト。
- その他、全体にグラフィックスは綺麗で上質。
- ちょっと不思議な雰囲気の、ほのぼのとしたシナリオ。
ここが×
- 猫のままで行って欲しかった（笑
- 素材は良いがシナリオの練り込みが足りない。
- 後半が少々唐突かも。
■海岸通りの猫たち
私は猫が大好きです。犬の方が賢いし人によく懐くから好き、という意見ももちろん分からなくもないというか、もっともなんですが、猫の孤高さというか気高さ、そう「心を許さないものにはついて行かないよ」という感じ、そして懐いた時の愛らしさがとても好きなんです。まあ犬も大好きですけどね（笑）。
てことで、とても可愛らしい猫のゲームをご紹介。以前にも猫を取り上げた物語として「子猫達の夜」をご紹介しましたが、あちらは猫のグラフィックスがシルエットだったのに対し、こっちはとても可愛いイラストつき。画面写真を見ていただければ分かる通り、猫好きならこれだけでご飯３杯は行けます（意味不明）。また、全体の雰囲気が何と言うかとても良いです。タイトル画面のロゴやセピア調のハーモニカも雰囲気出てるし、グラフィックスも柔らかなパステル調（語彙貧困で申し訳なし）。制作者は女性の方らしいですが、女性らしいセンスに溢れていると思います。
出だしは上に書いたある通りで、猫好きならかなりそそられそうな感じです。なんですが、この後はかなり人によっては「はあ？」な展開かも知れません（苦笑）。ネタバレになるんで詳細は書きませんが（って、開始すぐに分かると思うけど）、２回目のは飲ませる必要なかったんじゃないかなあ……。実は猫が登場するのは最初だけだし（苦笑）。
さて、このゲームは選択肢がない読むだけノベルです。メニューバーの「選択肢までスキップ」は、実はエンディングまでスキップです（笑）。しかし、私は良い物語であれば、別に選択肢がないノベルがあってもいいと思ってます。物語の「見せ方」の１つとしては、そういう媒体もありだと思いますからね。ただ、１本道でその場の展開が変わるだけでもいいから、何らかの選択肢があってくれれば、と思ったのも事実です。それだけで読む側の「感情移入度」も変わると思うのですが。
そして、今作は全体にほのぼのとした雰囲気ですが、ただのほのぼのではなく、話が進むとそれなりに展開を見せます。ですが、どこかで見たようなと展開と言うか某作品そのまんま、と言うのが……。シナリオを盛り上げようとしているのは分かるんですが、あと一練り足りないというか、練り以前に粘土に混ぜる水が足りないというか、そんな感じ。粘土の素材は良いだけにちょっと惜しいな。
あと、後半の展開を見て思ったのは、前半にもうちょっと伏線張って欲しかったなあと。後半はちょっと唐突な感じになってしまってますし……。キャラは結構魅力的なだけに少し残念です。
と、難点も抱えるものの、全体の雰囲気はとても良いですし、短い時間でちょっとほのぼのとした気分に浸れる佳作だと思います。猫好きな方はやってみて損はないかも？