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僕と君の夏休み

【僕と君の夏休み】 準推薦
■制作者/僕夏製作委員会(ダウンロード
■容量/267MB

夢緑夏樹は、高校生最後の夏休みを過ごすため、美富島へ向かう船のデッキの上で海を眺めていた。やがて島で出会う幼なじみ、お姉さん、巫女さん、そしてお兄さん(?)。僕の、そして君の夏休みは、どんな色に染まるのか。ヒロイン5人、たっぷり楽しめるマルチエンド恋愛ノベルゲーム。

ここが○

ここが×

■古い「記憶」と、新しい「想い出」と

匿名掲示板2ちゃんねる発の作品は、何本かご紹介してきました。「ちょこっとループ」「ゆき☆おん!」「愛娘」ですが、そのどれもが、匿名故に色々な人が集まるというメリットを感じさせる野心作でした。この作品もそうなのですが、手のかかりようが尋常ではありません。

まず、オープニングのムービーでびっくりしてしまいます。また、背景グラフィックスも立ち絵も手がかかってますし、1枚絵も大量です。更にBGMは全部オリジナル。かなり多くの人が製作にかかわったようです。そうでないと、ここまでのものはなかなか作れないでしょう。とにかく、この作品は見た目でまずは驚かされる事間違いなしです。

物語としては、主人公が夏休みを過ごすために小さな島へやって来て、そこでヒロインの家が経営する民宿で過ごすという出だし。パターンとしては「夏色のコントラスト」に近いものを感じさせますが、あの作品とこちらでは、醸し出す雰囲気が全く違います。ま、当たり前と言えば当たり前かも知れませんが……。

今作は、いわゆるクリッカブルマップ形式の恋愛アドベンチャーです。選択肢は存在せず、島のマップを見て、お目当てのキャラがいる地点に行けばいいだけなので、攻略は簡単です。トラベルアドベンチャー系の作品ですから、クリッカブルマップ形式を採用したのは成功だと思います。それだけで旅の感覚が演出できますし、終盤にはプレイヤーまでもがこの島にちょっとした愛着を持ってしまいますしね。

さて、ヒロインは5人です。幼なじみ、妹風、お姉さん風、巫女さん、幽霊。ツボを押さえた選択ですね。立ち絵は少し絵柄の違いが目につくところもありますが、気になるほどではありません。2ちゃんねるで作られた作品ですので、そういうネタもそこかしこにちりばめられており、ちょっと内輪受け感がするのは否めません。ま、これくらいなら許容範囲内ではないでしょうか。ホモキャラ(?)の阿部高和なんかは、面白い立ち位置のキャラで、私は成功していると思います(しかし、後半の夏祭りシーンのBGMにはまいった。さすがは2ちゃんねるだ(笑))。絵日記などの演出は良いアクセントでしたね。

舞台が夏の島だけに、キャンプに花火に夏祭りと、おいしいイベントは一通り取り揃えてあります。いわゆるカレンダー消化型ですが、個性的なキャラクターのやり取りもあり、カレンダー消化型にありがちな退屈感はさほど感じません。ただ、ヒロインにより、シナリオにちょっとばらつきがあるのが気になります。例えば、楓シナリオとあやめシナリオを比べてしまうと「うーん」と首を捻ってしまいます。特にあやめのあの「動機」は、それはどうなんだという感じです。

また、伏線が後半で収束するというタイプのシナリオではないんですが、それにしても中盤までがキャラクターの力押しになってしまっている感はぬぐえません。全員分のシナリオを読んだ後も、「この作品で一番表現したかった物語はこれ!」というのが、見えにくく感じました。主人公の記憶の問題が、各シナリオでもう少し上手に生かされていればな、とか。これは作られ方を考えればしょうがない点ではありますし、逆にその「ごった煮感」を楽しむべき作品という気もしますけど。

この作品の何よりの美点は、「夏休みを離島でのんびり過ごす」という雰囲気が、凄く良く出ている点です。夏の日差し、そして広さと狭さが同居した、不思議な閉鎖空間が上手に描けていますし、多彩なマルチシナリオはたっぷり楽しめます。私は清理シナリオが気に入りました。脇キャラの彦麿が良い味を出しています。個人的にはもも→あやめ→紗耶→清理→楓、くらいの順番を推奨したいと思います。

システムは見慣れないもので、オリジナルっぽい感じです。おまけ等も充実していて、システム周りに不満は全くありません。エンディングの演出まで全く手抜きがなくて恐れ入りますが、ただあやめエンドと楓エンドのあの歌だけは、どうなんだと思わなくもない(笑)。プレイ時間は、初回が3時間、コンプリートで8時間から10時間でしょう。プレイ時間は長いですが、快適に読めます。暑い夏、じっくりと楽しめる作品です。

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