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Blume外伝 ~ひまわりの咲く頃に~

【Blume外伝 ~ひまわりの咲く頃に~】 準推薦
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■容量/399MB

主人公梅川悟は中学3年生。幼なじみの恵理佳は、両親ともに芸能人で才色兼備という人もうらやむ環境だったが、両親の不仲に悩んでいた。恵理佳が自分と同じ高校へ行けないかも知れないと知った悟は、何とかしようと奔走するが、子供にできる事など限られていた。気の利いたオチが見事な中編ノベル。

ここが○

ここが×

■心からHappy birthday to you

数百本の作品をプレイしていても、ラストで「おおっ!?」と思うという経験は、そうはできるものではありません。この作品は、まさにラストの意外さが印象的です。と言っても、謎が解けたりする訳ではありません。状況と展開で、プレイヤーに意外な方向から一撃を加える作品です。既出の作品で例えるなら、「こんな物語」に近いでしょうか。もちろん、物語の雰囲気が似ているという訳ではないのですが。

この作品は、いわゆる「感動系」ですが、既存の作品とはひと味違います。とは言え出だしは、非常にどこにでもあるタイプです。主人公が授業の終わった教室で居眠りして夢を見ていると、それをヒロインが起こす、というもの。そしてヒロインの両親が芸能人という設定。変わっています。この設定が物語に関わる事になるんですが、出だしは静かな感じです。

さて、この作品は途中まではかなり淡々と進んでいきます。ヒロインの両親が不仲で別居状態で、ヒロインの恵理佳は主人公の悟と同じ高校へ行けないかも知れない。それを悟が何とかしようとするんですが、この辺りはちょっと動きが乏しい感じがするんですよね。脇キャラは多いですがメインの登場人物は多い訳ではありませんし、会話にもう一つ粋なところがあるか、あるいは主人公がもうちょっと強力に物語を引っ張れば、中盤がだれなかったんじゃないかと思います。

しかしラストに至って、「これ、どうやって解決するの?」と思っていた私は、全く予想外の方向から現れた事実に、「そう来るか!」となってしまいました。お見事、完璧なミスディレクションです。ラストの演出も良いですね。文章だけの演出で、非常に大きな効果を上げています(ただ、とある演出については、元のネタを知らない人には何が何だか分からないでしょうから、何かしらの説明が欲しかったところです)。

と、ラストはとても良いのですが、惜しむらくはそのラストを生かすための伏線やキャラクターの動かし方が、ちょっと十分とは言い難い事。恵理佳の両親に関する描写が薄いので、せっかくの良いラストシーンがちょっと押しが弱くなってしまっているんですよね。前半に回想シーンを入れるとか、家族の何らかの描写を入れるとか、そこらがあればもっとラストが生きたのではないでしょうか。曲の件についても少し唐突な感じがありますし、そこらについて前半からフォローがあればな、と。

特に、恵理佳と彼女の母玲佳については、父親である秀正との確執がある意味物語の中枢なのですから、最後でそこがきっちり解決するところを描写して欲しかったところです。あと、スタッフロール後のエピローグが、ちょっと意味が分からなかったんですが、どうやらこの作品は外伝のようですので、そこらと関係するのでしょうか。外伝と銘打ってはありますが、この作品単体で物語は完結してますので、問題なく楽しむ事ができます。

ちなみに今作、メインキャラから脇キャラに至るまでフルボイスです。特にアイスキャンデー売りのおじいさんが良い味を出しています。主人公に声があるのは、賛否が分かれるかも知れませんね。少年らしい演技で、私はこれはこれで良いと思いましたけど。そして「屋良内科」ネタはけっこうウケました(笑)。

容量がちょっと(もの凄く?)大きすぎるのが難点ですが、その分というか、挿入歌がたくさん入っていて雰囲気を盛り上げます。プレイ時間は1時間半くらいだと思います。システムは吉里吉里。こういう「荒削りな中に、光る要素を持っている」作品、好きです。

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