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夏の雫

【夏の雫】 ■制作者/晴れ時々グラタン(ダウンロード
■容量/28.6MB

10年ぶりに田舎の寂れた駅に下り立った凌。プラットフォームの公衆電話から電話をかけるが、電話はすぐに切られてしまう。そんな凌の前に現れた少女、夏海。夏を愛し、夏に愛された少女との10年前の想い出と約束が、少しずつ形になっていく。ビジュアルが目をひく夏の日の物語。

ここが○

ここが×

■去り行く夏に、きらり

暑いうちに、夏をテーマにした作品をもう1つご紹介です。ここのところ夏をテーマにした作品が続きますね。病院ものが続く時には続いたりしますが、私は同じようなテーマの作品を連続してプレイする傾向にあるようです。季節ものの中でも、夏は特に多く取り上げられるせいもあるからかも知れません。今回は「夏の雫」をご紹介です。

出だしはよくある感じです。ある夏の日、故郷の寂れた駅に下り立った主人公。「夏色のコントラスト」と同じですね。他にも「時の故郷」「夏夢海歌」も、近い雰囲気を感じさせます。もう一つ近い雰囲気の作品がありますが、それを書くとネタばれになってしまうので、控えておきます。

さて、主人公である凌はホームから電話をかけた後、いかにも曰くありげな少女と出会います。この少女は凌の幼なじみで、彼女との想い出やらを挟みながら物語は進行していきます。アイキャッチが入る度に過去回想と現在が交互に描かれるという作りです。

そして、物語としては特に捻ったところがある訳ではありません。既存の作品にも同様のプロットのものは多いと思います。そんな中、この作品が特に目を引くのはビジュアル面の美しさ。立ち絵、イベント絵はもちろん、タイトル画面やアイキャッチも丁寧で、雰囲気を出しています。この手の「夏に故郷で幼なじみと再開」ものは、こういった雰囲気作りも大いに作品世界の演出にプラスに働くと思います。夏の海の雰囲気が、よく出ていたと思います。また、一枚絵の使い方が上手いですね。フラッシュバックとしての使い方とか、スクロールさせたりとか、非常に効果的です。

物語ですが、展開それ自体はさほど目新しいものではありません。ただ、夏海の過去とか、そう言ったどろどろした事実、あるいは過去の意外な真相とか、そういう描写がものを言うシナリオのはずなんですが、事実の描写が少々弱く、全体に心情描写に傾いてしまっている感があります。なので読みながら「あれ? どうなってるの?」とか、「どうしてこういう展開に?」となってしまう事もありました。

もちろん、独特の心情描写が面白い効果をあげている事も事実なんですが、この作品の場合は、もうちょっと心情描写よりは事実描写に重きを置いて、さらに場面描写をもうちょっとシンプルにし、テーマにダイレクトに迫った方が良かったように感じました。物語それ自体はシンプルなので、心情描写に重点を置くのもありだとは思いますが、この作品の場合は、揺れ動く心情の移ろいが絡み合って進行するというよりは、やはり事実の解き明かしで動くタイプですし。物語の一番の核となる後半の事件があるんですが、そこへ至る事実描写が弱いんですよね。ですから、一番肝心な場面で唐突感を感じてしまいました。ちょっと惜しまれます。

終わり方は、ハッピーエンドとは言えません。まあこの手の作品ですから、幸せな結末を迎えようがないという話もあるんですが、その枠内で綺麗な終わり方をしていると思います。欲を言えば、そこからもう一歩踏み出す主人公の姿も見てみたかったところ。しかし、良い余韻を残してくれるエンディングだと思います。終わり方に納得の行かない方は、全部のエンディングを見た後、後書きを読んでみてください。

選択肢は、全体を通してたったの1回しか現れません。その1回の選択肢でエンディングが分岐しますから、分かりやすいです。システムはNScripter。おなじみのツールバーにメニューがないので面食らいました。右クリック2回でメニューが現れます。プレイ時間は1時間。やはり、幼なじみと再会するのは、夏に限ります(?)。

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