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娘子隊皓旗

【娘子隊皓旗】 ■制作者/藍恋(ダウンロード
■容量/53.7MB

日本が極東戦争により統治権を失った近未来。国は7つに分割され、国連が日本を統治していた。日本は独立を勝ち取るため、人型兵器EAの部隊を駆って、国連軍に戦いを挑む。雪に覆われた北海道で、独立のための戦闘の幕が開く。戦闘シーンの迫力が目を引く、短編ノベルゲーム。

ここが○

ここが×

■あなたのハートにロックオン

ノベルゲームで戦闘を主体にした作品を取り扱うのは、思いのほか難しいと思います。台詞とか擬音だけだと訳が分からなくなりますし、くどくど描写してたら読み手が疲れます。今回は、短編ながら戦闘シーンのリアリティに唸らされる作品をご紹介。「じょうしたいこうき」と読みます。分類すれば「戦記もの」でしょうか。「ドラゴン」という作品もありましたが、あちらは戦闘機乗りの物語。こちらで登場するのは、パトレイバーを思わせる人型兵器です。

まずは、少々突飛な設定が目をひきます。日本が統治権を失い、国連軍が日本を治めているという設定です。シチュエーションだけで盛り上がります。架空の人型兵器EAの描写とか、無線通信の様子がそれっぽいなと思ったら、作者さんは元自衛官なんだとか。なるほど、さすがです。この手の作品は、こういう箇所のリアリティで作品全体の説得力が大違いですが、さすがに知識のある方が語るとフィクションもリアリティを感じます。

そして文章がとても上手いです。上手いですし描写も適度。そのため、この作品の一番の鍵となる戦闘シーンの迫力が素晴らしい。リズミカルで上質な文章は、この手の作品を作ってみたい方が多いに参考にできるところがあるんじゃないでしょうか。専門用語も多いですが、流れで読めますからそれほど気になりません。

物語としては、それほど難しい展開はせず、どちらかと言えばストレート。ま、30分くらいの短編ですから、これ以上複雑にすると訳が分からなくなりそうです。しかし、個人的にはこの内容を盛り込むなら、もっと長めの物語になっていれば、より完成度が高まったのではないかと思います。後半は若干展開が急ぎ気味で、2時間の映画を30分のダイジェスト版で見た、みたいな消化不良感があるのです。ストーリー自体は味わえるんですが、ちょっと急かされた感じは否めません。特にライサのああいう設定を出したり、「日本独立のための戦い」という物語を盛り込むには、少し尺が足らなかったかな、と。

ちなみに作中で登場する人型兵器EAに乗っている隊員は全員女性なんですが、ちゃんと理由付けがしてあります。こういうのは賛否両論かも知れませんが、私はありだと思います。ま、立ち絵があったりする訳じゃないので、単に気分の問題ですけど(笑)。息づかいが聴こえてきそうな登場キャラの描写も、見事なものだと思います。おっと思わされるような印象的なやり取りもあったりして、文章力の高さをうかがわせます(ミハイルのラストの台詞が好きです)。

後半からラストへ至る展開は、上に書いたようにちょっと飛ばし気味のところはあって、「物語を味わったという満腹感」という点では少し弱さを感じますが、その分肩の力を抜いて読めます。終わり方は綺麗ですし、読後感も良好です。タイトルをぱっと見ただけだと興味をひきにくいところがあるかも知れませんが、戦記にありがちな難しいところもなく、どなたにもお勧めしやすい作品だと思います。

上述の通り、立ち絵、1枚絵はなく、背景は全てカットアウト加工がほどこされていますが、この加工が雪に閉ざされた北海道という雰囲気を高めていて良かったですね。起動した時のエンブレム表示もかっこよく、キャラクターのやり取りなどを含めて、全体の雰囲気がとてもクールです。

ツールは吉里吉里で、選択肢はありません。難読タイトルで敬遠される方もいらっしゃるでしょうが、騙されたと思ってプレイしてみてください。これは見逃すには惜しい作品だと思います。

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