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ほうき星の夜

【ほうき星の夜】 ■制作者/ロレンゾ(ダウンロード
■容量/2.36MB

小学6年生のたかしは、ある日父親の望遠鏡を持ち出して、友達のこうと彗星を見に行こうと計画していた。そこへ現れたのは幼なじみのめぐみ。めぐみは約束を守らないたかしを非難する。果たして彗星観測はどうなってしまうのか? 子供さんも安心のハートフル短編ノベル。

ここが○

ここが×

■ときめいてブルーコメット

最近のノベルゲームは、立ち絵やイベント絵があって当たり前、ムービーもないような作品はプレイもしてもらえないというような、そんな風潮も感じられます。しかし私は、全て素材利用、立ち絵も1枚絵も何もないような地味な作品も、時々妙にプレイしたくなる事があり、たまにそういう作品を狙い撃ちで探したりします。この作品は、そういう絵なしフル素材の地味な作品の中でも、ちょっと存在感のある雰囲気を出していたので、取り上げてみました。

この物語の主人公は小学6年生で、基本的には主人公の一人称で話が進みます。そして、漢字のほとんどにはルビが振られており、また物語自体も子供さんの読み手を意識した内容です。主人公が、父親の望遠鏡を持ち出して彗星観測に行こうとするが、幼なじみに止められて云々という出だしは、NHKの小学校の道徳番組(今でもやってるんでしょうか?)を思わせます。

こう書くと、子供向けの面白みのない物語のようにも聞こえそうですが、この物語は、登場人物が小学生であるために生ずる制約と、逆にそのために生ずるキャラクターの言動を、上手に料理しており、びっくりする事件は全く起きないんですが、物語としても読み応えのある内容となっています。

主人公の一人称なので、つまりは小学6年生の言動を読んで行く訳ですが、適度に背伸びして、適度に子供らしく、不自然さがありません。「いやいや、こんな小学生いないでしょう」という箇所はありませんでした。それでいて、子供らしい意地をはりつつも、後半ではちゃんと主人公の成長も垣間見えるシナリオで、短編ながら味わいのある物語です。キャラクターも、それぞれに個性的で、役割もしっかりしていて好印象でした。

ただ、この作品も唐突に一人称が変わってしまい、面食らいます。基本的に、一人称がやたら変化するというのは文章表現としては避けた方が良いと思いますし、ノベルゲームとしてあえてそれを演出的に取り入れるのならば、やはり何かしら読者に分かりやすい仕掛けを作った方が良いように思います。例えば、フォントの色を変えるだけでも、読み手に対する分かりやすさが全然違うはずです。

もう1つ、漢字にはルビが振られてあって、それ自体は親切なのですが、それならばもうちょっとフォントサイズを大きく、改行ピッチも広く取り、せっかくのルビが生きるようなレイアウトにした方がより良いのではないでしょうか。画面にぎっしり文字が埋まる箇所が結構あって、更にそこにルビも加わるので、少し見にくさを感じました。

背景とか音楽は、全部素材で、極めておなじみのものばかりです。演出回りも含めて、非常に地味である事は事実です。物語も「普通の小学生の物語」で、何ら奇跡も起こりません。しかし、フリーのノベルゲームは、マンパワーに物を言わせて玄人はだしの作品を作り上げるのも醍醐味ですし、またこの作品のように、作りたいと思った物語を、気軽に形にして公開できるというのも、また醍醐味です。そういう意味で、こういう作品の存在は大切なんじゃないかなと思います。

ツールは吉里吉里、選択肢はなし。プレイ時間は30分でしょう。オチの付け方も綺麗で、読後感もとてもさわやか。デコレーション山盛りの作品も良いですが、たまにはこんなあっさりハートフルな作品を、一服の清涼剤としていかがですか?

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