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EDELWEISS

【EDELWEISS】 準推薦
■制作者/幻創映画館(ダウンロード
■容量/111MB

世界戦争の末期。少年兵として前線に送られたギュンターは、仲間とはぐれて大けがを負い、森の中の家で目を覚ました。そこにいた少女は何者なのか、そしてギュンターは森で何を見るのか。異色の戦記風ファンタジーノベル。

ここが○

ここが×

■Meine Heimat gesegnet!

非常に珍しいジャンルのご紹介です。あえて分類すれば「戦記もの」になるのかも知れませんが、そこにファンタジー風の味付けを加え、非常に独自の存在感のある作品です。戦争を題材にした作品と言えば「空を渡るツバサ」「娘子隊皓旗」がありましたが、ここまで戦争の悲惨さを前面に押し出した作品は珍しいでしょう。

出だしから強烈です。主人公は14歳の少年なんですが、戦争末期のため少年兵として前線へかり出されます。同期はばたばたと死んで行き、特に序盤でのとあるエピソードはあまりに強烈です。読み手によっては、そこで白旗を上げてしまう人もいるかも知れません。

そして森の中で出会った少女とのふれあいと通じて、物語は少しずつ進行していきます。しかしこの少女、一部のシーンを除いて全くしゃべりません。おまけにそこかしこから迫って来る戦闘の恐怖。そんな訳で、この作品には「楽しさ」とか「希望」とか言ったものが、全く感じられません。最初からそんなものは放棄しているようにすら感じます。

恐らく、ここらがこの作品を受け入れられるかどうかの鍵となるでしょう。ノベルゲームに、楽しい非日常を求めるならば、この作品はお勧めできません(私も、どちらかと言えばそういうタイプです)。しかし、非日常であるからこそ、現実では味わえない悲しみや辛さというものを描き出すというのも、物語作りの1つの方向です。そしてそういう方向の物語としては、この作品はかなり高水準であると言えましょう。

この作品は「明けない夜が来る前に」の作者さんによる新作です。前作同様、16:9のワイド画面です。前作はほとんどワイド画面のメリットが感じられませんでしたが、今作は背景もワイドで、演出面でも一段と洗練されています。また、アニメ映画風の演出で見せてくれた前作と比べ、今作は背景の上下を切り、ドキュメンタリー風の加工を施したり、テキストの表示が映画の字幕風だったり、かなりこだわっています。作者さんのセンスがなせる技ですね。音楽は素材なんですが、曲調に統一感があり、良い選択で作品の雰囲気を高めています。

テーマがテーマだけに、エンターテインメント性は皆無ですが、反面、メッセージ性は非常に強い内容です。ただ、それなりの長さの作品なんですから、少しは息抜きになるような展開も欲しかった感じがします。物語全体としての完成度は高いのですが、展開として見れば少々一本調子なところがあるのは否定できないのです。

それと、一部で描写が少々こってりしすぎているところがあるのも気になりました。展開自体がこれ以上ないほど重苦しいのですから、そういう場面はむしろ描写はさらりと流した方が、かえって良かったのではないかという気がします。とは言え、くどく感じるほどではなかったので、これはこれでありかも知れません。

物語は、リアル一辺倒ではなく、ファンタジーな要素も織り交ぜますが、最後まで希望のかけらも見えません。しかしだからと言って、どこにも救いがない鬱な物語という訳ではなく、読み終えれば間違いなく、作者さんの強いメッセージと共に、前向きな気持ちが浮かんでくるはずです。読む人を選ぶ物語ではあると思いますが、個人的には是非食わず嫌いをせずに味わっていただきたいと思います。

また、この手の戦記ものに、ファンタジックな要素を混ぜると、一気にリアリティが下がって興を削がれる事もあるんですが、この作品に関してはそんな事はありません。ラスト近くの1場面は、明かされる事実の衝撃と共に、かなり胸に迫るものがあります(どのシーンの事かは、プレイしてみればすぐに分かります)。

なお、舞台はドイツっぽいのですが、そのせいかタイトルメニューまでドイツ語になっています。これ、読めない人はどうするんだ、と余計な心配をしたのは私だけでしょうか(検索すればいいことなのかも知れませんが)。

システムは吉里吉里、選択肢はなしで、プレイ時間は2時間。極端に長い物語ではありませんが、とにかくずしりとした重量感のある物語です。シンプルなエンディングの美しさが大変印象に残ります。一文一文を噛み締めて読んでみたい作品です。

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