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発掘少女

発掘少女 ■制作者/Living Room(ダウンロード
■容量/167MB

ゴドーは、メンフィンの街で淡々と地下遺跡にもぐっては、発掘品を商組合のマクレーンのところへ持って行く、しがない冒険者。ある日彼は遺跡の中で、何と眠っている少女を見つけた。妙な形の耳と尻尾を持つ彼女の正体は一体? 盛りだくさんな内容の長編ファンタジー恋愛ノベル。

ここが○

ここが×

■君のいる部屋に「ただいま」

私はあんまりノベルゲームを物語で分類したりはしませんが(その割りに、毎回勝手なジャンル名を連発してますが)、分類するとしたらこの作品は非常に分かりやすい類型と言えましょう。「ボーイミーツガール同居型」です(主人公のゴドーは、ボーイという年でもありませんけど)。古くは「Moonlight Blue」、最近では「君の道、僕の道」という作品が、近い雰囲気を持っています。

が、この作品が際立っているのは、舞台設定にファンタジーを持ってきた点です。主人公が冒険者というのも変わっています。冒険者が遺跡の中で眠っている少女を見つけるという、一見ありがちそうで、フリーではなかなか難しい物語です。

何故難しいかと言いますと、ファンタジーものは背景素材が場違いなものだったりすると、それだけで興ざめになってしまうものなのです。そしてファンタジーものの背景は難しいものです。しかしこの作品はそこらも手抜かりがありません。遺跡内部などの、恐らく一番フリー素材に頼れないような背景イラストが、自作なのです。この手間のかけようには拍手を送りたいですね。実際、この背景が独自の世界観を確立する上で、大きな助けになっています。

さて物語ですが、前半は「ボーイミーツガール同居型」としては典型的な展開です。ゴドーとヒュナが同居して、子供同然のヒュナは色々トラブルを巻き起こして、そこに後輩で大家のパシフィカが絡んできて……という感じ。ヒロインのヒュナは、最初は言葉も片言なのですが、短期間で徐々に成長していく辺りで、プレイヤーの保護欲(?)を刺激してくれます。

後半で、物語は隠されていた要素が一気に明らかになり、急展開を迎えます。が、ちょっと「隠され過ぎ」のきらいがなくもありません。この手の物語ならば、もっとシンプルにゴドーとヒュナの心のふれ合い、プラスするにしてもヒュナの正体云々くらいにとどめておいた方が、結果的にもっと前半に効果的な描写も増やせたでしょうし、全体としての満足感も高まったように思うのです。

何せ、主人公であるゴドーの隠された過去に始まって、パシフィカとのあれこれ、マクレーンのどうこう、ウェザーリンの思惑、もちろんヒュナの過去から何からがどさどさっと一気に来るのです。せっかくの前半が淡白に感じてしまう結果になってますし、何せあまりにも盛り込み過ぎて、後半はプレイヤーが置いて行かれがちです。

この手の作品の名作をひもといてみますと、メインである「見知らぬ少女との同居」の他には、意外なほど要素はシンプルなのです。ちょっと盛り込む要素を欲張り過ぎた感があります。筆致は非常に巧みで、「上手いのに嫌味を感じさせない」文章が見事ですから(粋な台詞回しも多くて、感心させられます)、シナリオメイキングに「切り詰めて、厳選した要素を深める」ようなところがあれば、と思わせられます。

それと、ラスト近くでヒュナがゴドーに会うのをためらうシーンがあるんですが、ここら辺りはヒュナにもゴドーにも感情が移入できず、さりとて当然マクレーンは行動があまりにアレすぎて感情移入できず、ウェザーリンやパシフィカにも当然感情移入できず、読んでいる私は(上の要素も加えて)ダブルで置いてけぼりという状態に。心情描写そのものは見事なのですが、糸が絡まり過ぎて、登場キャラ全員に「お前は結局どうしたいんだ!」と言いたい感じでした(汗)。せっかくヒロインのヒュナが大変魅力的なのですから、シンプルに彼女の良さを生かした方が良かった気がします(後半はこってりなんですが、前半のゴドーとヒュナの交流シーンは、どちらかと言うとさらっと流されますし……)。

しかし、終わり方自体は綺麗ですし(ちょっと反則に感じなくもないんですが(笑))、エンディングムービーも雰囲気たっぷりです。確かに後半は要素を盛り込み過ぎているところは否定できませんが、意外な展開の連続で飽きさせませんし、展開にだらけるところもなく、一気に読めます。システムは吉里吉里、プレイ時間は3時間で選択肢はありません。正統派を変わった器に盛って、隠し味をふんだんにちりばめたような作品。ヒロインヒュナの可愛らしい1枚絵は必見です。

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