にぃにぃ☆にぃとだうん
準推薦
■制作者／すたじおにぃにぃ（ダウンロード）
■容量／453MB
主人公新居徹は、親戚に任されたマンションの管理をしながら、日がな一日ネットゲームに明け暮れるニート。なのに幼なじみの愛花、隣人の羽衣、年下の親戚いろはと、女性運だけはやたら良い。ニートな主人公が、果たしてどんな恋愛物語を繰り広げるのか。ニートのニートによるニートのための物語。
ここが○
- 個性的で可愛らしいヒロイン達。
- 凝ったグラフィックスや曲。
- 脇キャラまでフルボイス。何てパワフルなニート達なんだ（笑）。
ここが×
- 主人公がニートである必然性があまりない。
- 主人公が自分を見つめ直して成長するところが欲しい。
- 羽衣シナリオと他の２人で落差がありすぎる。
■ニートだって恋してみたい
匿名掲示板２ちゃんねる発祥の作品は定期的に現れますが、これもそうです。ただ変わっているのは、製作者達が全員ニートで、物語の主人公もニートという事。そう言えば「愛娘」も、ちょっとそんな感じの作品でした。あの作品はニートではなくアルバイトでしたが、あの作品の主人公がもの凄い駄目人間でしたので（汗）、今作もとっかかりはちょっと怖々読み進めました。
が、主人公の徹は意外と駄目人間ではありません。自分の意見も見せてくれるし、他人への配慮もできるところがある、言わば「ちょっとできるニート」なのです（何それ）。そんな徹の回りに３人の美少女が絡んで来る恋愛物語。冒頭でネットゲームのシーンが出て来たり、そのネットゲームで知り合った女性プレイヤーとメールの交換をするシーンがあったり、仕掛けも凝っています。
まずちょっと気になるのは、ヒロイン３人の扱いの違いです。愛花もいろはも、40分くらいで終わってしまう、短編と言っても良いくらいの物語です。それくらいの短さですから、登場キャラの葛藤などがイマイチ伝わってきません。特に愛花シナリオでは、徹が「こんな自分のそばにいたら彼女が幸せになれない」と愛花を突き放すという、「愛娘」でも見たような展開になるのですが、ここは主人公がニートという設定を生かして、愛花と仲直りするまでに主人公が自分を見返す、なんて描写が欲しかったところです。それがなく、友人の一言であっさり解決するので、ちょっと食い足りなさが残ります。このシナリオでは、いろはがすぐにフェードアウトしてしまうし（汗）。
いろはシナリオは、更に徹がニートである必然性がありません。短編作として見ればそれなりに整っているのですが、いろはというキャラの特質を生かして、もう１つ２つ要素を盛り込んで欲しかった気がします。ただ、いろはの可愛らしさは抜群で、色々な意味で破壊力満点でしょう。この作品自体には特に推奨年齢はありませんが、Vectorなら年齢制限をかけられる事間違い無しです（笑）。
さて、ある意味メインヒロインの羽衣。「うい」と読みます。私は最初「はごろも」と読んでました（笑）。彼女のシナリオだけ妙に長くて力が入っていますし（１時間半くらい）、色々な要素が盛り込まれていて、後半まで飽きさせずに読ませてくれます。徹や羽衣の過去、それにネットゲーム絡み、更には愛花やいろはも適度に絡んで来て、バランスの良さを感じさせます。
ただ、このシナリオでも愛花シナリオと同様に、主人公が愛花を突き放す（それに羽衣も絡んでくる）のですが、ここにやはりもうちょっと説得力が欲しかったですね。どのシナリオでも共通ですが、「徹がニートから脱却し、自立への一歩を踏み出した」な描写がないと、愛花を突き放す描写が説得力を欠きます。「結局ニートのまま、女の子とキャッキャウフフしてます」じゃ、愛花を突き放したアレはなんだったんだ、という事になりますから。
あとは、羽衣のちょっとメンヘラチックなところとか、引きこもりとして一面を踏み込んで描写するなどしても面白かったかも知れませんが、あれ以上盛り込むとごちゃつきすぎた恐れがありますから、現状くらいが案外ちょうど良いのかも知れませんね。
この作品は全キャラがフルボイスでしゃべります。ちょっとキャラによって録音状態に差があるのが気になりますが（愛花の声が妙にこもった感じ）、フリーですから、ここは黙ってニートの心意気を汲みましょう（？）。音楽やグラフィックスも手がかかっており、これを１月で作ったというのは、さすがにニートならではです。
選択肢は１カ所で、その結果だけで３人のシナリオに分岐しますから、全然難しくありません。プレイ時間は全部で３時間。システムは吉里吉里。深い事を考えずにさくっと楽しめる恋愛物語です。