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ゲームで裁判員! スイートホーム炎上事件

ゲームで裁判員! 準推薦
■制作者/大阪弁護士会(ダウンロード
■容量/428MB

ある日高槻市で起こった、会社経営者の放火事件により、車いすの妻が死亡。起訴されたのは、被害者夫婦と同級生だった男。被告人は犯行を全面否認。この難しい裁判で、あなたが裁判員に選ばれた。さあ被告人は有罪か無罪か、Give me a Truth!

ここが○

ここが×

■裁きの幕が、今開く

最近レビューが滞り気味ですが、久々に非常に面白い感覚の作品をプレイしました。刑事ものとか探偵ものはありましたし、家庭用作品では主人公が弁護士という作品もありました。しかしこの作品は史上初、主人公が「裁判員」なのです。製作者は「大阪弁護士会」。シナリオは弁護士がじきじきに手がけています。この作品は法教育のために作られたそうなんです。いやはや、この段階で既に度肝を抜かれてしまいます。

弁護士会が作ったアドベンチャーゲームというと、ノリとして、運転免許センターで見せられる映画みたいなものを想像していたんですが(をい)、この作品はいきなり豪華なムービーが出て来て更にびっくりさせてくれます。御丁寧にナレーションつき。また法廷に入るシーンなども、凝っていて緊迫感十分です。その他、プレイ中も演出には工夫が凝らされており、これだけの完成度の作品は、そうそう出会えるものではありません。

ゲームで裁判員!さて、この作品の主人公は裁判員で、検察側や弁護側とのやり取りをしたり、時には証人に質問をしたりしながら、最後には裁判長、裁判官も交えた協議で、被告人が有罪か無罪かを決定するというシステムです。システムは複雑そうに見えますが、実はそこまで難しくはありません。それはこの作品が、謎解きミステリーではなく、あくまで「裁判員の疑似体験」「法教育」を目的としたものだからでしょう。ですから、リアリティの点では素晴らしいですが、ドラマ性という意味では正直物足りないものがあります。

しかし、それは作られた目的を考えれば当然のことでしょう。私たちが仮に裁判員を経験するとして、サスペンスドラマのような事件に出会うはずもありませんから(笑)。その意味で、この作品は適度にデフォルメも効かせつつ、エンターテインメント性と実用性(?)を、バランスよくまとめていると思います。「異議あり!」も出て来ますが、「逆転裁判」みたいなマンガチックな演出はありません(笑)。

エンターテインメント性と言えば、登場キャラクターが適度に個性的で、物語に花を添えています。人情派のおばちゃん、家庭で問題を抱えている主婦、インテリ風の元高校教師、売れない芸人など、裁判員の面々はバラエティに富んでいて、ちょっとした会話や、各キャラのバックグラウンドを、くどくない程度に隠し味に使っています。また、メインとなる裁判長&裁判官の2人も、良い味出していますね。

惜しむらくは、弁護士と検察官たちがちょっと薄過ぎる点ですが、これは作品の性質を考えれば仕方ないでしょう。あくまで主人公は裁判員ですからね。また、作品の難易度が必ずしも高くないのも、裁判員の緊張感を上手く描きつつ、プレイヤーに裁判員制度を身近に感じさせる事に成功している一因でしょう。法廷の場面は、やたら難易度ばかり高い推理ノベルより、よほど緊迫した空気が味わえます。

難易度について書きましたが、基本的にはコマンド選択式で、証人への質問では質問を選択できます。また、証拠品を選択するシーンもありますが、これも難しくはありません。むしろ、リアリティがかもしだす緊張感と、自分の選択とか思い込みで裁判の行方が変わってしまう辺り、つまり「裁判員が裁判の鍵の一端を握っている」という事が体験できるところが、この作品の一番の見所です。

上でも書いたように、「ドラマ」として判断すると、弱いところがあるのは仕方ありません。何せ推理ものではないので、「真相が明らかにならない」のです。しかし、裁判というのはそういうものでしょう。「シミュレーター」としてはよく出来ていますし、何より「ゲーム」としても単純に面白いです。大阪弁護士会、日々激務に追われているはずなのに、良い仕事します。

ツールは吉里吉里、プレイ時間は1時間半~2時間くらいでしょうか。クリア後にはおまけまで出現する念の入れよう。一見固そうなタイトルと製作者(笑)で、ちょっと敬遠してしまう人も多いかも知れませんが、この作品は面白いですよ。是非体験してみてください。

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