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Cranky Apple

Cranky Apple ■制作者/Project-Apple(ダウンロード
■容量/42.0MB

高校生のミドリは、クラスに溶け込む事もできず、保健室にばかり通う日々。幼なじみである養護教諭の秋尾椿にも呆れられる毎日だった。そんなある日、保健室で美人の透明人間に出会ったミドリは、彼女をさっちゃんと呼んで慕い、更に保健室に入り浸るが。女性同士の友情短編ノベル。

ここが○

ここが×

■けれど私にはあなただけ

最近は、フリーでも玄人はだしのイラストがついた作品も珍しくなくなってきました。しかし、この作品の絵は、別の意味で目をひきます。いわゆるCGっぽい絵ではなく、絵画風なのです。独特の暖かみがある絵で、今風とは言い難いですが、第一印象で「おっ」と思わされました。最近では「黄色いレンガの道の果て」が、アクリル画の背景がついてましたね。ばりばりのCGも良いですが、こういう絵って見ていて気持ちが落ち着きます。絵柄もそうですが、メインキャラ2人が女性という事もあって、ちょっと少女漫画らしさを感じさせるところもあります。

この作品の主人公は、内向的(を通り越して閉鎖的と言ってもよいような)な女子高生です。彼女には他人には見えないもの(幽霊その他)を見る能力があって、彼女がある日保健室で美人の透明人間と出会ったところからお話が始まります。主人公が内向的で透明人間ものということで、「冥王星と透明少女」をちょっと思い起こさせます。

Cranky Appleまず目についたところなんですが、主人公が人との付き合いを極端に避けて、透明人間とばかり接触するという点においては、「冥王星」同様なんですが、この作品の主人公ミドリは、妙に騒がしいのです。

それでいて、行動に主体性というものがなく、自分で何かを切り開こうというところが(ラストまでは)見られないため、言動の騒がしさと妙なギャップを感じ、中盤から後半ではちょっといらいらさせられるところがなくもありません。「冥王星」と違い、ミドリとさっちゃんが同性であるというのが、一因なのかも知れません。

それと、これは長所と短所が表裏一体であるのですが、短編と思えないくらいしっかり展開する反面、少々物語に奥行きが欠ける点がある気がします。これは恐らく、描写が「広く浅く」に徹しているからかも知れません。ミドリの心情などを細やかに描写するよりは、過去の出来事(与作の件とか肝試しとか)を盛り込み、映画館お出かけイベントも入れ、展開のバラエティとスムーズさをとった結果かも知れません。

なので、さほど長くないにも関わらず、過不足ない展開で、語りすぎずにテンポよく読めるという美点があるのですが、逆にテーマ(主人公の心の自立)からすると、端折るところは端折って、もう少しテーマに絡むところを深く掘り下げても良かったのかなあと感じました。

しかし、ミドリとさっちゃんの適度な距離感は上手く描けており、主体性がない主人公に対し、さっちゃんはちょっときつめの言動にも嫌味がありません。この2人のコンビネーションはよくできていると思います。ラスト近くのさっちゃんの台詞も、決まってますね。欲を言えば、大団円に椿も絡ませてあげれば、もっとバランスが良く、綺麗なエンディングになったんじゃないかな、と。

冒頭でも書きましたが、絵画風の絵がついているこの作品、1枚絵もとても魅力的です。画力がもの凄く高いというタイプの絵ではないのですが、とても暖かみがある絵ですし、何より色使いが良いです(上のスクリーンショットではその良さが十分伝わらないと思いますが)。また、良い場面で良い絵が来ますから、絵とシナリオが上手に絡み合って作品全体の印象を高めている好例ですね。

システムはNScripterです。選択肢はありません。プレイ時間は45分くらいだと思います。なお、主人公2人が女性ではありますが、別に百合ものではありませんので、あしからず(笑)。存在感のある絵との相乗効果で、読み手に個性のある印象を残す作品でした。

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