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アイノムコウデ

アイノムコウデ ■制作者/黒歴史二回転(ダウンロード
■容量/31.2MB

夏休みに入ったばかりの早朝、早く目が覚め過ぎた一彦はシャワーを浴びていたが、近所に住む同級生の女の子天音に、自転車で出かけようと誘われた。まだ藍色の空の下、一彦と天音は、ひたすら「青いもの」を目指して進むが。ほのぼのした雰囲気のループ恋愛ノベル。

ここが○

ここが×

■目的は青春です

時たま、全く意図せずに同じようなジャンルの作品が続く事がありますが、今回は2回連続でループものが続いてしまいました。珍しいですね。前回の「彼女の嘘の止まった世界」は、学園ループ恋愛ものでしたが、今回は夏休み中ですので、学園は舞台になっていません。夏休み4日目の早朝、ふと主人公一彦が目を覚ますところから始まります。

そして、一彦と天音の2人がサイクリングに出かけるというスタート。この出だしだけだと、夏を舞台にしたほのぼの恋愛ものかと思いきや、途中でいきなり急展開が起こり、ループに突入していきます。ここら辺りの展開バランスは良好で、おやっと思った頃に事件が動くので、退屈しません。

アイノムコウデこの作品に立ち絵はありませんが、1枚絵は独特の絵柄で目をひきます。流行りの絵柄ではなく、どちらかと言えばちょっとアクがつよいタイプの絵柄ですが、画力はしっかりしていると思いますし、存在感もあります。色使いも上手く、力量を感じさせますね。特に背景の水彩画風の処理が、独特の雰囲気を醸し出しています。この絵がヒロインの性格によくマッチしていて、ヒロインの存在感を高めていると思います。

そしてこの作品は、恋愛がメインテーマです。なのですが、そこがちょっと弱いように感じます。主人公の一彦は、夏休み前までは彼女がいたという設定なのですが、事実だけで主人公の恋愛に対する描写、あるいはヒロインである天音に対する描写が薄めであるため、少し淡白に感じるのです。2人が心を通わせるようになる過程、あるいは一彦が自分の気持ちに気付く過程が、もう少しストレートに出された方が、この手のシナリオには合っていたのではないでしょうか。もちろん、途中で過去の描写が出て来たりはしますが、もう一歩の踏み込みがあればなあと。

それと、ループに巻き込まれるようになった原因が、イマイチはっきりしないので、少し釈然としないものが残ります。いっそ、一彦の元彼女の美保を巻き込んだドラマにしてみたら、色々綺麗なオチがついたんじゃないかな、と感じました。ループものとしては、解決法その他にもう一捻りが欲しかった気がします。

しかし、ヒロインの天音はいいキャラクターです。一彦との何気ないやり取りも面白いですし、ラストの「将来的にはいいけど、今は駄目!」には、思わず頬が緩みました。確かに、恋愛に至る過程の描写は弱いんですが、シーン1つ1つを切り取ってみると、良い場面、良い台詞が多く、印象に残ります。個性的な1枚絵が、大いにその助けになっていると思います。

舞台は夏の田舎町で、そういう作品は多いんですが、この作品も夏の田舎町の雰囲気と、明るく開放的なヒロインの性格がよく合っていて、良い雰囲気でプレイできる作品です。若干誤字脱字が多いのが気になりますが、文章力も確かで、描写量も適度でしょう。色々な意味で「節度のきいた」作品となっています。

ツールはLive Makerで、選択肢はなく、プレイ時間は45分くらいだと思います。ループものって、ループの謎を全面に押し出した作品が多いんですが、この作品は夏の爽やかな雰囲気の中で、ほんのりとした恋愛を味付けに使ったループもので、気負わずに読めると思います。「普段着恋愛ループ」という、ちょっと変わった空気感の作品でした。

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