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彼女の嘘の止まった世界

彼女の嘘の止まった世界 準推薦
■制作者/CALMFLAP(ダウンロード
■容量/51.6MB

佐伯翔は普通の高校生。今日から夏休み、と思って目を覚ましたら、何故か日付が1日前に戻っていた。翔が違和感を抱えつつ学校へ行くと、屋上でクラスメイトの少女、灯と出会った。巨大な立ち絵が目をひく、学園ループノベル。

ここが○

ここが×

■想いは奇跡を越えてゆく

最近は、特に商業のノベルゲームでワイド画面のものが増えているようです(私は商業はプレイしませんけど)。この作品もワイド画面。そのせいか、立ち絵が非常に大きく表示されるのが特徴的です。今作を分類すれば、学園を舞台にした恋愛ループノベルというところでしょう。「彼女の嘘の止まった世界」のご紹介です。

ループものは何度か紹介しましたが、ジャンルとして確立している割に、作品数は多くありません。というのも、ループする世界という前提自体が非常識ですから、その世界観を説明するために、何らかの超自然的な力を持ち出すしかありません。あるいは、ループする理由を説明せずに、「これはこういう世界なのだ」と納得させるという方法もあります。この作品の場合は、前者ですね。一見自由なようでいて、かなり高度なシナリオ作りを要求されるというのが、ループものに手を出す上での難しさだと思います。

彼女の嘘の止まった世界普通ループものの場合、登場人物は最初はループに気付いていません。ところがこの作品の場合、冒頭から既に主人公は違和感を感じているというのが、ちょっと新しいです。7月21日、つまり夏休み前の終業式の日を繰り返すのですが、そのループの中で主人公はクラスメイトの灯(最近この字を使ったヒロインが多いですね。流行でしょうか)と出会い、彼女と共にループする世界の謎解きに挑みます。

さて、ループものは「何回繰り返すか」というのが読み手に与える印象が大きいように思います。あの「ひとかた」は5回ループしますが、5回目はさすがに「もう勘弁してくれ」という感じでしたし(笑)。何せ同じ1日(ないしは数日)を繰り返すのですから、通常のカレンダー消化型に比べるとシナリオの組み立てが難しいのは間違いないでしょう。

そしてこの作品が何回同じ1日を繰り返すのかと言うと、何と14回!(多少の前後はあるかも知れません) その分、1日1日は決して長くはないのですが、中盤辺りはさすがにちょっとだれてしまうのは致し方のないところです。後半になると物語がだんだん動き始めるのですが、灯のお父さんの件などは「え、いきなり!?」と感じなくもありません。14回繰り返す中の、12回目くらいからしか登場しませんから、どうしても読み手に唐突感を与えてしまっているのは否めないのです。十数回も繰り返すだけに、もちろんイベントはあれこれあるんですが、もう少し絞り込んで、1回1回のループの内容を濃くした方が、後半への流れが生きたように思います。

しかし、後半はかなり盛り上がる展開を見せます。後半急激に盛り上がると言ってもいいんですが(笑)、メインのラストも綺麗な終わり方ですし、エピローグは本編での些細なエピソードを上手く持って来て、またすっきりと締めてくれます。人によっては「ご都合主義過ぎる」とか「ちょっと蛇足では」と思う方もあるかも知れません。しかし、ループものというのはそもそも前提からして荒唐無稽なのです。ならば、終わり方もいっそ徹底的に「奇跡」に頼ってもいいのではないでしょうか。今作はその「奇跡」の持ってきかたとしては、後半良い流れを作れていました。

冒頭にも書いたようにこの作品は最近流行りのワイド画面なのですが、どうも私はノベルゲームにはワイド画面が向いているとは思えません。サッカー中継などだとワイド画面が生かされますが、ノベルゲームの場合はよっぽど横方向の動きを生かす動きや演出でもない限り、「ただ横に長いだけ」になってしまいがちです。しかもワイドなだけに、立ち絵が終始バストアップになってしまいます。1枚絵とのバランスも考えた場合、やはり従来の画面の方が綺麗だと思うのですが。テキストウィンドウの配置バランスも難しいですし、立ち絵が大きくなる反面、ポーズの変化で見せる演出もしにくいですし。

この作品の場合、ループする理由というか、世界観の説明のところで、ちょっと「??」となってしまうのは否定できません。ま、しかし勢いで流してしまえる範囲だと思います。もとよりループものでそこまで真剣に理由を追求しても仕方ないですしね。キャラクターも多数で個性的です。個人的には、重要な役所の透子にもうちょっとスポットを当てて描写して、キャラ数を絞った方がいいようにも感じましたが。

システムはYU-RIS。プレイ時間は1時間半から2時間弱で選択肢はありません。ループ回数は多いですが、以外とさくっと読めます。途中シリアスな展開にもなりますが、読後感は非常に良いハッピーエンドですので、少し歯ごたえのある物語を読んで、良い気分になりたい方にお勧めです。

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