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四上ミヤコはなびかない

四上ミヤコはなびかない ■制作者/ななみまい(ダウンロード
■容量/23.9MB

四上ミヤコは中二の女の子。ある日友人のユキから、好きな人がいると言われ、間を取り持ってくれるように頼まれる。ユキのお願いは今に始まった事ではないので、ミヤコはしぶしぶ承諾するが、さてユキの恋愛は成就するのか。ちょっと変わった視点の、青春短編ノベル。

ここが○

ここが×

■恋に恋する5秒前

この作品をジャンルで分ければ恋愛ノベルですが、恋愛対象は主人公ではありません。主人公の友人が片思いを告白し、主人公に手助けを頼むというもの。つまり主人公はキューピッド役ですね。そういう点では、「晴れた日9月、恋天使」に少し近い雰囲気もあります。こちらも、主人公達は女の子ですしね。

主人公であるミヤコは中二の女の子ですが、妙に冷めたと言いますか、達観していると言いますか、良い意味でも悪い意味でも愛嬌がないキャラクターです。もっとも、そういうところがあればこそ、中盤から後半、ミヤコが思わず考え込んでしまうあの設定が生きているとも言えますし、ミヤコのそういうところを、友人であるユキやランが上手くフォローしているとも言えます。その意味で、この主人公トリオ3人はなかなか上手く作ってあると思います。

四上ミヤコはなびかない物語は、ユキと彼女の想い人であるモリトの橋渡し役を頼まれたミヤコが、色々やってみるが空回りした結果どうのこうの、という感じです。「晴れた日9月、恋天使」だと、主人公はちゃんとキューピッド役としてのお役目(?)を果たしますが、この作品では、主人公はほとんど何の役にも立っていません(汗)。

ですからこの作品は、主人公が友人の恋を取り持つ物語と見せかけて、実は主人公であるミヤコのちょっとした成長を描く物語であると言えるでしょう。ですから、ミヤコの愛嬌がない性格を、ユキやランがフォローしているという、上にも書いた点が生きていると言えます。ミヤコがユキをフォローしていると思いつつ、実は逆であるのです。それが物語のテーマと上手くマッチして、ひと味違った短編に仕上がっていると思います。

なので、ぱっと見愛嬌がないように見えるミヤコですが、特にラスト近くではなかなか可愛らしい所を見せてくれるなと思いました。終わり方も、なるほどそういう描き方に持って行くのかと感心しました。上手いと思います。色々と続きを考えてみたくなりますよね。

ただ、エンターテインメントとして見ると、あそこで終わってしまうのはやはりちょっと物足りなさが残ります。起承転結の「結」がないまま終わってしまったようなもやもや感が残るのです。せめてもう一押し最後の展開があれば、かなり印象が違ったのではないかと思うんですが。

それと、立ち絵がないにも関わらず個性的で面白い主人公3人組と比べると、男性キャラの存在感がちょっと薄いような気がします。一応恋愛ものなのですから、恋愛対象となる男性キャラ、なかんずくユキのお相手であるモリトに関してはもう少し突っ込んだ描写があっても良かったのではないでしょうか。そういうところがあれば、ユキの恋愛模様に関しても、もう少し緊迫感のある展開が作れたのではないかと思います。

しかし、単なる恋愛ものではない、一風変わった視点からのアプローチは、大いに評価されるべきだと思います。こういう物語は、なかなか狙って作れるものではありません。単なる「恋愛成就もの」ではなく、「恋愛って何だろうと考える女の子もの」とでも言いましょうか(何それ)。甘いのでも、酸っぱいのでも、苦いでもない、この独特の恋の味わいは、味わってみる価値があります。

ツールは吉里吉里で、プレイ時間は30分程度、選択肢はありません。実はこういう物語こそ、選択肢を入れてみても面白かったような気もしますが、ひと味違う恋愛ものとして、気軽に楽しんでみてください。

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