い～びる☆あいっ！
■制作者／「い～びる☆あいっ！」製作委員会（DL）
■容量／428MB
要真緒は、大学を出たばかりの新任教師。この度、祖母のコネでお嬢様女子学園に赴任する事が決定。学園長である祖母に、学園の寮の監督を頼まれたのだが、その寮に入っているのは、皆一癖も二癖もある子達ばかりだった。2chVIP発、ぶっとんだキャラ設定のマルチシナリオ恋愛ノベル。
ここが○
- システム、グラフィックスなど高いクオリティ。
- 豊富で個性豊かなヒロイン達。
- どのシナリオも、ラスト近くまでちゃんと全キャラに活躍の場がある。
ここが×
- キャラが個性的すぎて、読んでいて疲れる。
- 中盤までがとにかくだれる。
- その上、終盤の盛り上がりにイマイチ欠ける。
■あなたの瞳に映るとき
時々、２ちゃんねるのVIPという掲示板発祥の作品が登場しますが、この作品もそうです。Vectorの作者欄を見ると、「僕と君の夏休み」の作者さんになっているんですが、一部スタッフが共通しているんでしょうか。詳しく調べていないので分かりませんが、あの作品同様、ぱっと見のクオリティは非常に高い作品です。オープニングムービーも凝っています。
この作品の主人公は、新任教師。舞台は全寮制のお嬢様学園。ヒロイン達は全員中学２年生です。最初私は高校生だと思っていたんですが、中学生だと分かった瞬間、ぶっ飛びました（汗）。まあ、問題のある描写が出て来る訳ではないので中学生でもいいのかも知れません（笑）。
そのヒロイン達が入っている寮の監督を、主人公が依頼されるんですが、ヒロイン達は、やれ自分は魔王を倒す騎士だの、将来のロックスターだの、訳の分からない事ばかり言っていて、序盤ではプレイヤーがさーっとひいていく事間違いなしです（笑）。一応「中二病」と言ってますが、中二病というのはもっと思想的な特徴の事で、こういうのは中二病とは違う気もしますが、まあいいでしょう。特に、ヒロインの中でもメインの扱いである、莉緒と芽衣子のやり取りは、中二病を通り越して、「この子ら統合失調症なんじゃないか？」とすら思えてきます（爆）。
進行は、よくあるカレンダー消化型で、作中の期間で１ヶ月以上を過ごす、かなりの長丁場です。なので、この手のマルチヒロインカレンダー型ノベルの宿命として、中盤まではかなりだれます。長さの割に、中盤までは「この物語はどの方向へ向かっているのか」がさっぱり見えない上、キャラクターが揃いも揃って電波なので、疲れてしまうんですよね。
しかし、１人１人を取ってみれば限りなく電波なヒロイン達ではありますが、６人を１つの共同体として見れば、案外悪くありません。莉緒と芽衣子が火花を散らし、せえらと奏がそれを見てはやし立て、和がとりなし、寮長が締める。単体で見ればぐだぐだになりそうなんですが、意外と各々の凸凹っぷりが上手くはまって、そういう意味では、独特の楽しさを醸し出していると言えます。
それが顕著に現れているのは、「各ヒロインルートのラストまで、全キャラクターがきちんと絡んで持ち場を持っている事」です。この手の作品だと、各ヒロインのルートに入ってしまうと、残りのヒロインは放置状態になりがちですが、その点からしても、単体としてはアレですが、グループとしては噛み合っている、面白いキャラクターメイキングの方法が、作品の性格を形作っています。
ただ、シナリオの作りとしては、長さの割にはどうにも盛り上がりに欠ける点は否めません。せえらや奏、和のシナリオは、彼女達の性格もある程度シナリオに取り入れられて、それなりの面白さがありますが、芽衣子と莉緒シナリオは、後半シリアスになればなるほどキャラクターとのギャップが凄い事になっていくという……。共同体として見れば面白いキャラ達ですが、個々をみるともうちょっと良い作り方があったと思いますね。
これは作品の感想とは関係ないですが、私の環境、すなわちMac OS X 10.6+Parallels Desktop 8+Windows 7でプレイすると、この作品はとてつもなく重いです。普段はNScrが軽くて吉里吉里が重いなんて事は意識しませんが、久々に「やっぱりNScrは軽いんだな」と感じました。もっとも、作者の皆さんはまさか私のような環境でプレイされるとは思ってないでしょうから、いい迷惑だとは思いますが（笑）。
システムは吉里吉里。選択肢はありますが攻略は難しくありません。バッドエンドもありますが、重要そうな選択肢は見れば分かりますから、セーブしておきましょう。全６ヒロインを攻略して、プレイ時間は13～14時間くらいです。癖のある作品ですが、こういう世界観を味わってみるのも、時には新鮮でいいかも知れません。