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ネガイノ屋上

ネガイノ屋上 準推薦
■制作者/たぶんおそらくきっと(ダウンロード
■容量/4.66MB

その学校には奇妙な言い伝えがあった。夜中の0時ちょうどに願い事をしながら屋上から飛び降りると、屋上の神様が願いをかなえてくれるというのだ。その少女は屋上に立ち、今まさに願い事をしつつ飛び降りようとしていた。ホラーかと思いきや、実は心が暖まる短編分岐ノベル。

ここが○

ここが×

■神は高きところにあり

最近、新しい作品がどうもイマイチピンと来ないため、ちょっと古めの作品を中心に色々当たっています。と言っても古い作品も当然かなりの数プレイしている訳で、そうなると「本来は私の守備範囲ではなさそうな作品」にまで手を広げないと、なかなかこれと言った作品には出会えません。この作品は2009年の公開。NScrpterのバージョンが古く「CD-DA」なんてのが入っています(笑)。

この作品が、なぜ「私の守備範囲ではなさそう」なのかと言うと、今作はぱっと見いかにもホラーなのです。「願いごとをしながら屋上から飛び降りると、屋上の神様が願いをかなえてくれる」という設定から、いかにもホラーチックです。なので見落としていたのかもしれません(私はホラーが大の苦手である)。実際、主人公の少女は序盤でいきなり屋上から飛び降ります(笑)。しかし、実はこの作品は全然ホラーっぽくありません。

ネガイノ屋上この序盤のつかみが上手く、読み手はいきなり物語に引き込まれます。冷静に考えると「いくら願い事があっても、屋上から飛び降りるか普通?」と思わなくもないのですが(笑)、作者さんの語り口が巧みで、それを素直に受け入れさせる力を持った文章です。文章力もしっかりしています。

エンディングは全部で5つで、中にはぞっとするような後味の悪い終わり方もあるんですが、トゥルーエンド(と思われるもの)を始めとして、ハートウォーミングなものとか、考えさせられるものとかバラエティ豊かで、この長さの分岐ノベルとしては、非常に上手く構成されていると思います(恐らくこの作者さんの作風としては、「ぞっとするような終わり方」の方なんでしょうが)。逆に、コテコテのホラーを期待していると、ちょっと肩すかしを食らうでしょうが、私はホラーが苦手なのでこれでOKです(笑)。

選択肢も、いかにも物語の展開を左右しそうなものばかりで、その結果も「なるほどこの選択肢ならこうなるだろう」と納得の行く展開です。短編の分岐ノベルで満足の行く分岐システムってなかなか作り辛いと思いますが、この作品は実に上手く作っていると思います。

ただ、主人公についての細かい設定がまったく語られないため(名前すら不明)、感情移入度という点では今ひとつではあります。ぱっと見も演出もすごく地味な作品ですから、その辺りは好みが別れるところでしょうが、ま、こういう過剰に語らないというのが、この作者さんの作風なのかも知れません。

NScripterらしく、文字速度が変わらなかったり(1行スクリプトを書くとこれは修正されるんですが……NScrだとちゃんと文字速度を変えられる作品に出会える事の方が珍しいです(汗))、NScrのバージョンが古いため、既読スキップがありません。まあ短編ですからそこまで困りはしませんが、複数回プレイが前提の作品ですから、公開時期を考えると、既読スキップは欲しかった気がしますね。

エンディングは5種類で、全部見ても30分かからないと思います。短く、見た目も地味ながらも内容の濃い分岐ノベルで、一見怖そうな見た目とハートフルな終わり方のギャップが面白いです。短時間で読み応えのある分岐ものをお探しの方、こういう変化球はいかがですか?

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