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さよなら眠り姫

さよなら眠り姫 ■制作者/♯(ダウンロード
■容量/8.41MB

高校入学を控えた如月雪花は、ある日突然「逃避病」という謎の病気にかかってしまう。同じ頃同じく高校入学を控えた少年詩月四方は、メールを通じて雪花と出会った。2人の出会いを仕組んだ「眠らず姫」。果たして逃避病の秘密とは一体? 雪花は目覚める事ができるのか? 独特の筆致で語るSFノベル。

ここが○

ここが×

■もうさよならは言わない

前回に引続いて古めの作品。以前からレビューを書こうと思っていたんですが、なかなか書くチャンスがありませんでした。何故取り上げなかったかというと、こういう架空の病気をテーマにした作品は、どうしてもちょっと躊躇してしまうというか(汗)。「さよなら眠り姫」です。タイトルからして、何かそそられる作品です。タイトルだけ見ると、ファンタジーっぽい雰囲気があるんですが、実はSFです。

舞台は架空の地方都市で、「逃眠病」という架空の病気がテーマです。その名の通り、ずっと眠り続けるという病気。そう言えば「箱庭のうた」でも、ちょっとそういう感じの設定がありましたね。言うまでもなく、こちらの方がずっと先に出ているんですが。で、冒頭は逃眠病でほとんど滅びかけた未来の世界が、ちょっとだけ描写されます。意味深でプレイヤーの興味をひくスタートです。とは言え、この作品は「逃眠病を治療する方法を探す」のがテーマなので、いわゆる「病院もの」「病弱もの」とは全く雰囲気が違います。

さよなら眠り姫そしてそこにタイムリープを利用したSF要素が絡んでいます。で、タイムリープものの宿命と言うか、ぼーっと読んでいると途中で訳が分からなくなります。また、一度クリアしただけでは謎が全ては明かされず、二度目から幕間が読めたり、外伝が読めるようになってから、初めて物語の全貌が分かるという仕組みです。あの当時(2006年くらい)にしては、かなり凝った作りであると言えましょう。

ただ、タイムリープの謎の部分はなかなか面白いのですが、肝心の逃眠病についての描写がイマイチ説得力を欠くと言いますか……。治療方法が出て来た時も「え、そんな治療法で?」となりましたし。まあ、実際の精神科治療でも「持続睡眠療法」とか「電気ショック療法」とか、「何それ?」みたいな治療法があったりするのは事実ではありますが(さらにその昔は、患者をいきなり橋から落とし穴で池に落とす治療なんてのもあったらしい(笑))。

まあその部分は根幹ではないですし、架空の病気なんだからという事で「まあいっか」にするにしても、ラストまでたどり着いた時は、「ちょっとちょっと、結局雪花の病気の原因は? これ、何も解決してないのでは?」と思ってしまいました。あれなら、1周目で終わっていた方が幸せだったような気がしなくもない(汗)。

あとは、あちこちで言われている事ですが、後半目覚めた雪花(ヒロイン)と四方が、いきなり○○した挙げ句○○してしまった瞬間は、画面の前で固まって絶句しました(まあこれは読んだ人みんなそうなんじゃないかと思いますが)。2人が知り合って交流した期間は実質1ヶ月な訳で、それを考えるとちょっとあれは、と思ってしまいます。

もちろん、描写を上手くやればその辺りに説得力を持たせる事も可能だったと思いますが、この作品はSFとしての凝ったプロットに比べると、キャラクター描写とか、恋愛描写についてはイマイチ薄味であると言わざるを得ません。なので、SFとしては面白い作品ではあるんですが、恋愛作品として見ると突っ込みどころ満載という結果に(汗)。

とは言え、フリーとしては今見ても前衛的とも言える作りの物語です。単純に物語だけ見れば、現在プレイしても遜色はないでしょう。難解な物語なので、人間関係や時間の前後関係などはメモを取りながら進めないと、混乱するかも知れません。

ツールは吉里吉里。音楽は全てMIDIなのが時代を感じさせます。システム的には何も凝った事はありませんが、こういう作品を見ると、ノベルゲームはやはりシナリオが命だと思わされます。プレイ時間は3時間くらいでしょうか。選択肢はありません。プレイした事のない人は、この機会に読んでみてください。

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