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一生に一度の、

一生に一度の、 準推薦
■制作者/都築製作所(ダウンロード
■容量/98.0MB

仕事をやめてだらだら毎日を送る藤吉郎。ある日古ぼけた祠で昼食を食べようとしたところ祠が壊れてしまい、犬の姿の神様が登場。祠を直せば願いを1つかなえてくれるという神様の言葉に、藤吉郎は早速祠の修理にとりかかるが。伏線が効いている短編ノベル。

ここが○

ここが×

■ある日僕は神様に出会った

ノベルゲームの主人公って、大抵が高校生ですが、この作品の主人公はニートです。ニートとは言え、親の残してくれた財産などで、生活には全く不自由していない毎日という設定は、「falling」を彷彿とさせます。そして主人公はニートの癖にいちいち態度がでかいです(笑)。

この作品を分類すると、「ボーイミーツガール同居型」です。主人公がある日、犬の耳がついた不思議な神様と出会い、その神様と一緒に住む事になるというもの。一般にこの手の作品は、シナリオがどこに向かっているか終盤まで分かり辛くてだれる事が多いんですが、この作品は、神様の祠を再建するという目的が明示されているため、その意味では分かりやすい展開です。登場キャラもほぼ2人しかいませんが、やり取りが軽妙でテンポも良好です。

一生に一度の、にも関わらず、中盤までかなりだれます(汗)。一番大きな理由は、主人公と神様の会話でしょうね。主人公は神様を「駄犬」呼ばわりの連発で、しまいに読んでいる方がいらいらしてきます。例えば、いかにゲーム中で痛い女性キャラがいても、ことあるごとに主人公が「クソアマ」なんて呼んでいたら、読み手は絶対疲れますよね。同様に、今作は主人公の言動に疲れるのです。ま、そういうキャラクター設定だから仕方ないですが……。

そして、主人公がそうやって神様に毒づく度に、神様のお仕置きが炸裂し、その度に画面が揺れるという演出。これがもうしつこいくらいに繰り返されるため、多分ほとんどの人は途中でお腹いっぱいになると思われます。藤吉郎お前学習能力ないのか、と(汗)。こういう繰り返しのやり取りを面白く作るのは大変難しいですが、今作はちょっと安直、かつ読み手のストレスを考慮していないように感じました。

さて、神様は祠を再建できたら、主人公の願いを何でも1つかなえてくれると約束します。よくある分かりやすいタイプの物語かと思いきや、後半は意外な展開を見せます。また、中盤までにそれとなく張られた伏線が、ラストで上手く回収されるという作りも上手いですね。ただ、主人公の過去にまつわるエピソードに関しては、もうちょっと前面に押し出しても良かった気がします。あまりにさらりと流されるため、「実は」を秘密が明かされた時も若干唐突感が。「もうちょっと説明しておこうよ」という感はぬぐえません。

逆に、神様の秘密に対する伏線は、非常に上手いと思いました。さりげない小イベントの中にもネタが仕込まれていたり、芸が細かいです。さほど長くない物語ですが、そういう意味でシナリオの組み立てという意味では、大変巧みに作られている作品だと思います。

今作は見ての通り流行のワイド画面ですが、やはりワイドの意味はほとんどありません。ノベルゲームで、ワイド画面が成功したなあという作品って、ほとんどないんですよね。ノベルゲームというのは、そもそも文章を読ませるのに加えて、ワイドだと立ち絵の上下が非常に制限され、ポーズのダイナミックさが損なわれるので、個人的にはワイドにはあまり肯定的ではありません(文章がなくて、動きがある映画などとは、単純に比べられないと私は思ってます)。

ボーイミーツガール同居型の作品は、ハッピーエンドにもバッドエンドにもできると思いますし、事実後味のよくない終わり方の作品もあるんですが、この作品は非常に綺麗なハッピーエンドで、読後感はとても爽やかです。それこそ、中盤までのいらいらを払拭して、なお余りあると言っても過言ではありません。

ツールはNScripertで、プレイ時間は1時間半くらい。選択肢はありません。プレイ時間がそれほど長くないですし、中盤までだれるとは言っても、10時間かかる長編に比べれば可愛いものですから(笑)、そこは目をつぶってプレイしてみてください。ラストに大満足できると思います。

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