優しい心と空っぽの言葉
■制作者／alpha（ダウンロード）
■容量／64.6MB
教師を目指す大学生の大学４年生秋孝は、ある日突然付き合っている美帆から別れを切り出される。動揺する秋孝。そんな時、美帆の妹である夏帆から家庭教師を頼まれた。教師になる目的を見出せない秋孝は、夏帆との交流の中で少しずつ答えを探していく。ほんわかムードの恋愛ノベル。
ここが○
- 丁寧に描かれた心情。
- 個性的ながらくどくないキャラクター達。
- 一風変わった舞台設定とテーマ。
ここが×
- ちょっとしたバグが。
- 夏帆が急激に成績伸び過ぎのような。
- なのでラストに少し盛り上がりが欠ける。
■求めないで優しさなんか
恋愛ノベルの舞台って、ほとんどが高校だと思います。まれに中学生が主人公の作品もありますが、更に少ないのは大学生が主人公の作品じゃないでしょうか。ぱっと思い浮かぶのは、「はるけきかなた」でしょうか。と思って、「はるけきかなた」のレビューページを見ると、全く同じ事が書いてありました。進歩ないですね私（笑）。
この作品は、「左前の彼女」「Love song」を作られたalphaさんの作品です。このサークルさんはシナリオ自体は正攻法の作りながら、少し変わった設定で攻める作品が多いように感じていますが、今作もそういう感じです。何せ主人公に最初から彼女がいるというのも、ノベルゲームでは少し珍しいですよね。
その主人公の秋孝は卒業を控えた大学４年生。教員を目指していると言いますから、教育学部なんでしょうね。そんな彼は、ある日突然（デートにしょっちゅう遅刻してるみたいなんで、突然でもない気がするけど（笑））付き合っている美帆から別れを切り出されてしまいます。茫然とする秋孝。
そんな秋孝に、突然電話が。電話の主は美帆の妹で、中３の夏帆。吹奏楽に打ち込んでろくろく勉強もしていなかった夏帆が、名門吹奏楽部を持つ県下屈指の進学校に何とか行きたいので、家庭教師を頼みたいという頼み。いろいろあるんですが、結局秋孝は夏帆の頼みを引き受けてしまいます。なんかちょっと「ビリギャル」っぽいですね。と言っても見てないから知らないんですけど（笑）。
で、秋孝は夢に向かって懸命に努力する夏帆の姿を見て、少しずつ教師になる目的（志望理由）を見出していくという、そういう流れ。それほど大きな出来事は起こりませんが、決して平坦という訳ではなく、きちんと起承転結があるので、物語としての面白さもあります。また、キャラクターは多くないのですが、個性的でかつキャラ造形がくどくないので、軽快なテンポに一役買っていると言えますね。
ただ、夏帆は全然勉強ができないという設定なのですが、受験直前になっていきなり成績が伸び過ぎのような気もします。尺を考えれば仕方ないところかも知れませんが、そのせいもあってラスト近くの盛り上がりにも、ちょっと欠ける面があるのは、少し惜しまれます。少々、取ってつけたような都合の良さを感じさせてしまうんですよね。
それと、これはYU-RISというシステムの備えている性能と思いますが、作中の回想シーンでは背景や立ち絵がモノクロに変化します。これが効果的なのですが、モノクロになったシーンでメニューから「タイトルに戻る」を選び、再スタートすると、カラーであるべきシーンまで最初からモノクロになっているという、意外なバグが存在します。まあ、そういうプレイ方法は普通想定しないでしょうからね。私もたまたま気付きました。
今作は、主人公と美帆の恋愛模様と、夏帆の受験、そして一番の柱である、主人公が教員を目指す志望動機を見出すという、３つのテーマから成り立っています。夏帆の受験については、もう少し説得力のある展開が欲しかった気もしますが、３つのテーマがほどよく絡み合って、また心情描写も丁寧で、読み心地もいいと思います。
ツールは上に書いたようにYU-RIS。選択肢はなく、プレイ時間は１時間弱でしょうか。高校が舞台の恋愛ノベルに飽きた、でもやたらと前衛的な設定の作品も疲れる、一風変わったほのぼの恋愛ノベルが読みたいという方にお勧めです。