Wizardly Butterfly
■制作者／HERMAX（ダウンロード）
■容量／21.6MB
高校３年生の雨宮礼は、高校生活に何の意義も見いだせないまま、無為な毎日を過ごしていた。そんなある日、彼がよく通る丘の上で、美しい蝶を見つける。そしてその翌日に同じ場所で蝶を探す少女と出会った……。選択肢なしのデジタルノベル。
ここが○
- 音楽が良い。
- どこか考えさせられるところのある終わり方。
- ちょうど良い長さ、テンポのシナリオ。
ここが×
- 主人公やる気なさすぎ、他人任せすぎ。
- 無意味なインストーラー。
- ギャグが滑り気味。
■Butterfly surprised you
「Wizardly」とは英語で「不思議な」「超自然的な」と言う意味。つまり「不思議な蝶」。この作品は、もちろんあの有名RPGとは何の関係もありませんが、このタイトルを見て、私もやはり「ワ ー ド ナはくびをはねられた！」を思い出しまして。なので上の見出しはああなりました（笑）。そんな今作は、選択肢なしの恋愛系デジタルノベルです。
まず苦言からになってしまうのですが、この作品はあまりに主人公が無気力すぎて泣けてきます。やる気なさすぎ。自分では何もしようとせず、ただただ変わらない毎日を嘆くのみ。更に、出会った少女には勝手な思い込みから責任転嫁。作中で、主人公が自分の真面目ぶりを表すのに、「酒もタバコもやった事ない」なんて発言をするくだりがありますが、「当たり前だボケナス！」とツッコミを入れてしまったのは私だけでしょうか（笑）。
さて、本作はファンタジー系恋愛ノベルとでも言うべき分類になるでしょうか。章ごとには「源氏物語」からの引用文が出たり（こてこての理系の私には、全然内容理解できませんでしたが）、演出もなかなか凝っています。なので、言ってしまえば他愛のないテーマではありますが、この演出面との相乗効果で、なかなか読み応えのある物語になっていたと思います。途中で挿入される「キリンの話」も、個人的には効果的だったと思います。ラストにも上手く繋がったため、なかなか綺麗な終わり方をします。ただ、ヒロインへの当てつけにこんな話をする主人公はかなりアレですけど（苦笑）。
MP3の音楽はレベルが高く（素材なのでしょうが）、イメージに合っていてなかなか雰囲気を高めてくれます。キャラの立ち絵が、ヒロインのもの１枚しかないんですが、表情はなかなか豊かで、絵や音楽の面での不満は特にありませんでした。
ただ、最初に書いたようなやる気のない＆他者に責任転嫁しすぎる主人公は、ちょっと読む人を選ぶかも知れません。更に、ギャグが少々滑り気味なのが……（友人の寺山との会話とか、地球３周とか……）。文章力自体は決して悪くないので、ちょっとここら辺りが惜しまれるところです。恋愛関連の描写が希薄にすぎるのも、気になりました。ある日突然「そうか、俺はこいつの事を……」って、そりゃお約束ではありますけど（苦笑）、何かもう少し恋愛に至る過程のような描写が欲しかったような気がします。
ちょっと不思議な雰囲気の恋愛ノベルです。書いた通り主人公に癖があるのですが、そこを乗り越えられればなかなかしんみりできるお話を味わえると思いますよ。自分の書いたレビューを改めて読んでみたら、何だかきつい事ばっかり書いてますが、序盤の雰囲気に惹かれたら、最後まで読む価値は十分にあるんではないでしょうか。