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ゆうとっぷ

【ゆうとっぷ】 推薦
■制作者/はむたいら(ダウンロード
■容量/21.5MB

志野明雄は、目の前の風景を見て目を疑った。自分が病院のベッドに意識不明の重体で寝ているのだ。幽霊となった明雄はふらふらと夜の街を彷徨い、やがてツキミと名乗る1人の少女と出会う……。見た目は地味だがなかなか深い恋愛ノベル。

ここが○

ここが×

■P.S. I love You

さて、今年最後にご紹介は「ゆうとっぷ」。最近「ひとかた」とか「時の故郷」とか、別に私がレビューしなくても、既に多くの人がその素晴らしさを十分分かっている作品のレビューを書くと言う、ある意味無駄かも知れない事をしていた訳ですが、やはりフリーノベルレビューを書くなら「多くの人の目に触れていないマイナー作を見つけ出してレビュー」。これに尽きます(何が尽きるんだか)。

この作品、第一印象は甚だよろしくありません。ツールはLive Maker(初登場!)で別段不自由はないんですが、起動する度に見せられるロゴにかなり萎えます。そしてキャラの立ち絵が……。まあ絵自体はともかく、背景とマッチしてません。このキャラなら背景を、もっと写真を感じさせないくらいに加工した方が良かったように思います。

更に、病院関係の描写が多いんですが……。ちょっと病院周りの描写にリアリティがなさすぎます。別にリアルにすればいいってもんじゃないのは承知してますが、やっぱトラックに跳ねられたのに、目立った外傷がないってのはどうかと。ラスト辺りも、さっきまで意識不明だった人が、意識戻ってそう簡単に歩けてどうするよ、と。描いているテーマがテーマだけに、ここをもうちょっとこだわるだけで、説得力が大きく違ったんじゃないかと思います。

そして、主人公の弟の龍雄や、途中登場するアリスと言った子供キャラの描き方もちょっと。3才ならともかく、6才くらいの子供だったら、もうちょっと現状把握能力ありますって(苦笑)。あと、高校生の兄貴がいる子供は、20前後くらいの人をおじさんとかおばさんとか呼ばないと思います。よっぽど老けてるとかならともかく。私自身に14才年下の弟がいますんで、そこらは経験済みです。ちゃんとみんな「お兄ちゃん」と呼んでくれましたよ(笑)。アリスがやたらおじちゃんおじちゃん連呼するのも、少々萎えました。

と、最初に難点ばっかり書きましたが、実はこの作品はかなりお気に入りだったりします。まあこう言う「手作り感」溢れる作品が好きなせいもありますが、それを差し引いても今作は十分評価に値すると思います。まずシナリオ。かなり長いんですが、流れの作り方と言いますか、メリハリの付け方がうまく、だれる事がありませんでした。それでいて、ラストへの持って行き方、そこへのサブキャラの絡ませ方も上々。キャラの掛け合いも(上で書いたように、子供キャラはちょっと気になりましたが)、軽妙で楽しく、読む上でストレスに感じる点はありませんでした。

登場キャラでは、個人的には久生さんがお気に入りですが、鈴木さんや山田、委員長と言ったクラスメートなどもとても上手く描けていました。ともすればノベルゲームでああ言った高校生同士のやり取りと言うのは、下手をすると変てこなギャグで寒くなったりするものですが、今作はそこら辺りがとても上手かったですね。委員長はとてもいいキャラしてます。友達に欲しいくらい(笑)。

まあテーマ的によくある話って言えばよくある話なんですが、今作の場合はシナリオ、キャラ、文章のバランスが非常に良かったと言うか。エンディングは3種類あるんですが、どのエンディングも良く作られてると思います。トゥルーエンドのラストで、ツキミが目覚めるとこだけは都合よすぎと思いましたけど。あとは、明雄がツキミに魅かれる理由がもうちょっと明確に描かれていれば良かったかも知れません。

見た目がしょぼい事は否定できませんし、探せば粗も目立つんですが、そこをこらえてプレイしてみてください。素直に楽しめるキャラと物語、そしてちょっと感動できるラスト。こう言った作品を見つけると、「やっぱフリーノベル探しっていいよねー」と思ってしまう今日この頃です。

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