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彩りはじめた季節

【彩りはじめた季節】 ■制作者/Project-YUKA(ダウンロード
■容量/44.3MB

五十嵐亮介には、かつて大切な幼なじみ、葉山碧がいたが、突然の事故で彼女を失い、以後、他人との関わりを避け、心を閉ざしてしまう。ある日、亮介は碧にそっくりな少女、佐倉結花と街で出会う。ひょんな事から結花は亮介と同居する事に。綺麗なCGが目をひく、一本道の恋愛ノベル。

ここが○

ここが×

■日常的な非日常

これまたボーイミーツガールもの。ただし、直前にご紹介の「常世の星空」とは、全く雰囲気が異なります。私は2作連続でプレイしたんですが、どちらの作品も楽しめました。「常世の星空」が、少々ファンタジーめいていながらシニカルな味わいを持つ世界観が魅力だったのに対し、こちらは会話や心情描写を積み上げて行く正統派です。ありがちと言えばありがちな設定でスタートしますが、私はこちらの方が好みかも知れません。

主人公が好きだった女の子を失って……という前提の物語は、心情描写が凄く難しくなると思います。いつまでも失った人にとらわれていたら、読んでいてイライラさせられますし、あっさり心変わりしてしまったら、「何だそりゃ」となってしまいます。その点、今作はぎりぎりの線を上手く保てていたと思いました。大筋においてよくある物語なんですが、主人公とヒロイン結花の会話、それにバランスよく絡んで来る主人公の親友浩一が良く描けており、日常生活は生き生きと描写されています。

それにしても、この作品で感心させられたのは、グラフィックス。もちろん、立ち絵も背景も質が高く、表情豊かなんですが、背景と立ち絵の画質のバランスが非常に良いんですね。些細な事のようですが、こう言った細かい事は、世界観をかなり左右したりしますから馬鹿にできません。全体に、グラフィックス周りは非常に良い仕事をしています。イベントCGも良い出来です。個人的にはおでんが食べたくなりました(笑)。また、音楽もレベルが高いですね。

文章ですが、どことなく私の文章に似ているような気がしました。余計な描写をあまりしないタイプで、こう言う文章は好みです。ただ、大きなイベントがあまり起こらず、かなり淡々とした展開なので、ちょっと単調になってしまっているんですよね。

恋愛もので大きなイベントとか、意外な過去とか、そう言ったものに頼らないとなると、物語の魅力は、キャラクターの、恋愛に至る心理描写にかかってきます。が、今作はそこがどうも淡白だったような。日常の心理描写においては、上にも書いた通りストレスなく読めたんですが、恋愛へ至る描写がどうにも薄いため、ちょっとラストが説得力を欠く結果になっているのが惜しまれるところ。ヒロイン結花の身の上を、もうちょっと上手くシナリオに取り込められれば良かったように思いました。

それにしても、この作品は文章で伝えるのはなかなか難しい魅力があります。こういう、「街でかつての幼なじみと出会い、なぜか同居」という、「それは絶対ありえないだろ!」という設定の物語の場合、えてしてツッコミの嵐になってしまいがちなんですが、この作品は実に素直に読めました。起こっている事はものすごく非日常的でありえない事なのに、その「非日常」を「日常」として、さらっと受け入れさせる不思議な力を持った作品です。過剰に語り過ぎない描写と、そして上でも書いたように、ぎりぎりのバランスで読み手を引っ張る、日常の心理描写が効いているんでしょう。

その秀逸な心理描写を、恋愛描写にまで活かせば、もっともっと凄い作品ができるのではないかと、今から期待しています。プレイ時間は2時間くらいでしょうか。正当派恋愛ものがお好きな方、どうぞ。

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