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常世の星空

【常世の星空】 ■制作者/EXTRA(ダウンロード
■容量/27.2MB

綾河紅夜は高校2年生。生徒会副会長を務める彼は、ある日生徒会の作業に疲れて帰途についていたが、下校途中にやたらと気が強く、真っ白い肌と赤い目を持つ少女、九条命と出会う。命は、翌日もこの公園で紅夜を待つが……。選択肢なし、手堅くまとまった中編ノベル。

ここが○

ここが×

■何のために命を賭けますか

いわゆる「ボーイミーツガール」系の作品は、結構好きだったりします。あの「ハーバーランドでつかまえて」「ゆうとっぷ」など、「ある日見知らぬ少女に出会って」系列の作品は、名作良作が目白押しです。今作も、そんな「ボーイミーツガール」ものです。余談ですが、登場キャラの名前がライトノベルチックで、この原稿を書く時点ではさっぱり名前忘れてしまってました(汗)。

作者さんは「短編」と書かれてますが、私は読破まで1時間半ほどかかりました。中編と言っても良いくらいのボリュームだと思います。選択肢なしの一本道。ですが、まず気になったのは、「マウスホイールでテキストの読み返しができない」事。いちいち右クリックでメニューを開かないといけないのです。一本道シナリオとは言え、印象的だったシーンなどは、ちょっと読み返してみたいもの。何故こんな仕様になったのか、ちょっと残念な点です。

プレイしていてまず目を惹くのは、キャラの立ち絵。サイズも大きいですし、そのクオリティといい、非常に良く描けていると思います。テキストウィンドウにキャラの顔グラフィックも表示されます。主人公の顔グラもあるんですが、ここは好みが分かれるところでしょうか。私は特に気になりませんでした。特にヒロインは顔グラの表情も豊かで、楽しませてくれます。グラフィック関係では、イベント1枚絵が豪華なのも感心しました。

さて、この作品の核は、言ってしまえば使い古されたネタです。私がレビューした作品の中にも、全く同様のネタを取り扱った作品が、複数存在します。ですが、今作が優れている点は緻密なシナリオとか、意外な展開とかではなく、その「世界観」ではないでしょうか。音楽は素材ですが、その選曲や、あるいは背景画像の加工方法、また会話文1つをとっても、独特のセンスを感じます。ヒロインの命が、特に序盤はくどいくらい自己主張するんですが、逆にドライなほどの反応を見せる主人公と、上手く絡み合って、会話文だけでも終盤まで飽きさせません。

ただ、恋愛ものとして見ると、描写が薄いというか、薄いというより主人公とヒロインの温度差が凄くて、違和感を感じます。主人公が、わざと恋愛ものになる事を拒否してしまっているというか。作品のノリによってはそう言うのもありでしょうが、この作品の場合は、もうちょっと恋愛方面に振った方が、全体的なエンターテインメント性は上がったんじゃないかという気もします。

そして、物語はある意味予想通りの展開を見せてラストに至ります。ですが、このラストでも作者さんのセンスが光っています。主人公がラストにとる行動。その行動の意味を問われた時の回答。あの辺りの一連の流れなどは、特に感心させられました。作者さんも特に力を入れた場面なんじゃないでしょうか。ただ反面、「1分を争うこの非常事態に、のんきに会話してる場合か!」と、ちょっといらいらさせられたのも事実ですが(笑)。

ただ、盛り上がるラスト近くに反し、終わり方は非常にあっさりしています。思わず「あれ? 終わっちゃうの?」と言ってしまいましたから。もうちょっと主人公とヒロインの恋愛模様を、メインシナリオに絡ませても良いんじゃないかと思いました。もっとも、あのドライとも言える主人公の行動が、独特の世界観を創っているとも言えるので、難しいところでしょうけど、ラストはもうちょっと余韻が欲しかったなと。

冒頭のヒロインの「キレっぷり」に、ちょっとひいてしまうかも知れませんが、ボーイミーツガールものが嫌いでなければ、プレイするだけの価値がある作品。「意外な展開」を楽しめる作品ではありませんが、味わい深い一作です。

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