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You've got a friend

【You've got a friend】 準推薦
■制作者/スタジオビースト(公開終了)
■容量/26.5MB

落ちこぼれサラリーマンの小田切一生は、遅刻しては、上司である北条マヤに説教され続ける日々。そんな彼にもメールフレンドとのメール交換というささやかな楽しみがあった。そんな中、メールフレンドの自称女子中学生の橘亜依は、ある日のメールで……。エンディング4種類、キャラと設定の個性が魅力のノベルゲーム。

ここが○

ここが×

■もう1人のお兄ちゃんへ

「病院四連作」も4作目。いわゆる「不治の病もの」で、この手の作品は何度も取り上げましたが、今作はその中でも非常に変わっています。何と、主人公は一歩も病院に足を踏み入れませんし、それどころかヒロインと直接関わる事が全くありません。主人公の一生とヒロイン(というにはちょっと無理があるか?)の亜依は、メールのみで知り合い、メールのみでコミュニケーションを取る仲だからです。ちなみに、亜依が一生とメールを交換する事になったいきさつは作中で語られますが、主人公、かなりアホです(笑)。

それはともかく、主人公が病院側とは一切関わらない病院物というのは風変わりですが、ある種のメリットも生んでいます。いわゆる病院ものは、どうしても作品展開上重苦しい展開になりがちです。だからと言って、おちゃらけたシーンやギャグを入れてしまうと、作品世界が台無しになります。更に、リアリティにもある程度こだわらないと、作品が説得力を失います。「手を出すは易く、組み上げるは難し」、病院物の難しさがここにあります。

が、今作の場合、そのデメリットが一切ありません。主人公の言動はかなり馬鹿全開ですが(爆)、全く作品世界を壊したりはしません。当然です。主人公である一生と、ヒロインである亜依の生きる舞台は全く別で、メールでしかかかわらない、ある意味「赤の他人」なんですから、主人公がどんなに馬鹿をやったところで、亜依の辛さや深刻さを減じる事はないのです。また、病院の描写はそこまでリアルという訳ではないですが、これも同じ理由で、リアリティに少し欠ける事に由来するデメリットが、かなり軽減されています。

主人公がただの馬鹿なら、単なる訳の分からないお話になってしまうんですが、メール交換シーンだけは大真面目で、更に凄く優しい奴になるんですよね。なので、どんなに主人公が日常でおちゃらけて、作品全体を基本的に覆うムードはほんわかしているのに、深刻な雰囲気も決して失われません。電子メールが、お馬鹿な主人公の日常に、違和感なく、そしてさりげなく亜依の病院生活を少しだけリンクさせているのです。この作りは上手いですね。

シナリオ自体は、そこまで凝った作りをしている訳ではありません。主人公の過去などの伏線も、ちょっと効果を挙げているとは言い難いです。恋愛要素もありますが(お相手は亜依ではないですよ、念のため)、描写も淡白で「あれっ?」という感じ。4種類のエンディングは、どれもドラマティックとは言えないまでも、余韻を残してくれる物だっただけに、シナリオがもっと凝っていれば、より素晴らしい作品になったんじゃないかと思います。

音楽は全部自作。出来もまずまずで、こう言った点は評価したい点です。ただ、キャラの立ち絵は少々微妙かも……(苦笑)。絵柄はさておき、看護婦さんの腕が切れていたり、作りがちょっとなおざりなのが気になります。まあ、プレイしているうちに慣れてしまいましたけどね。看護婦さん、いい味出してるし(笑)。

ツールはYuuki! Novel。やはり分岐がある作品にこのツールは辛いですね。幸い、この作品は分岐条件がそう厳しくないので、そこまでキツくはなかったですけど。エンディングは4種類。3種類は割と簡単に見られますが、最後の1種類が、個人的には一番心に残りました。

読めば分かるように、登場キャラは全体に、個性的を通り越して結構ぶっ飛んでいる感じなんですが、上に書いた理由によるものか、あるいは主人公が定期的に見せるメールでのシリアスな優しさのせいなのか、何故か、「ぶっ飛んでいるけどまとまっている」この作品。技巧的にはもちろん粗も目立つんですが、不思議と心に残る魅力を持っています。「シリアスじゃなくて、でもちょっと感動できる病院物」をお探しの方、この作品などいかがですか? (10/5/2追記 公開終了しています。個人的に好きな作品なんだけどなあ)

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