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夢境迷宮

【夢境迷宮】 ■制作者/euno(ダウンロード
■容量/25.6MB

小学5年生のけいたが、ふと目を覚ますと、そこは見た事もないような場所だった。そこで出会う少女。しゃべる蛇、しゃべる花、しゃべるお星様。風船、シャボン玉、更に周りは春だったり秋だったり雪が降っていたり。この不思議な世界から、けいたは帰る事ができるのだろうか。独特な雰囲気の、1本道のノベルゲーム。

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ちょっと変わった作品のご紹介。主人公が小学生というのも変わっていますが、世界観がまた変わっています。登場人物は、主人公と終始一緒にいる少女の他は、ちょっとシニカルなしゃべるお星様に、気風のよいしゃべる蛇、それに「キキキキキキ、ケケケケケケ」と、訳の分からない事ばかり言う、しゃべる花。更にはシルエットでやたら飛び回る黒い男。ならばこの作品がコメディかと言うと、コメディではなく、分類すればファンタジーでしょう。

ファンタジーなんですが、突飛すぎるキャラクターに加え、画像加工が全体にちょっと投げやりな感じで、世界観を少々損なっているのが気になります。この手のファンタジーなら、背景画像や登場キャラクターにもうちょっとこだわれば、それだけで受ける印象が変わったような気がするんですが。この作品の場合、決しておちゃらけた物語ではなく、むしろ真面目なストーリーだけに、そこは強く感じました。どんな作品でも(特にSFやファンタジーの場合は)冒頭で世界観が決まりますが、この作品の場合はそこでイマイチ世界観に説得力を持たせられなかったため、終始世界観に対して違和感を持ってプレイする羽目になったのが、ちょっと辛かったですね。

さて、この作品は「ひとかた」に見られるような、「シナリオ繰り返し」を特徴とします(ネタバレの気もしますが、ダウンロードページで既に2周目の存在を明かしてますから、まあ勘弁してください)。これはこれで面白い手法です。が、この作品に関しては、その良さを活かし切れていない感じがしました。

シナリオが繰り返す系列の作品は、シナリオの組み立て、伏線の配置が何より大事になります。ただ繰り返しているだけでは冗長になりますから、伏線を巧みに配置し、徐々に謎が明らかになっていく作りにしなければなりません。そして、主人公が、またプレイヤーが徐々に真実を知って行くところに、この手の作品の面白さがあるのです。なればこそ、プロット、シナリオの組み立てと伏線の配置が、非常に難しいんですよね。

が、今作の場合は、伏線が皆無に近いんですよね(物語自体が、それほど細かい訳ではないですし)。単に、「繰り返す度に少しずつ出来事が変わる」だけでは、読者にかなりの苦痛を与えます(今作は、吉里吉里を使っているのに、何故か既読スキップがないので、なおの事です)。「想い出が詰まっているシャボン玉」などは、なかなか良い発想だと思いましたし、女の子の秘密を上手く絡ませたりすれば、もっと大化けできた作品と思われるだけに、少し惜しまれます。

と、欠点ばかりを書いてしまった気がしますが、この作品はプレイするのが苦痛だった訳ではなく、むしろ楽しくプレイできました。1周が長くないせいもありますが、かなり突飛なキャラクターは、突飛すぎて世界観を壊してしまっているとも言えますが、やり取りは軽妙で、シナリオ繰り返しもあまり苦になりませんでしたし。ただし、演出に関してはちょっと難があると思います。文字の演出も、一部くどすぎる箇所があるのが気になりました。

大げさな物語ではありませんが、プレイ後には不思議な余韻が残ります。この余韻こそが、この作品の魅力だと思います。音楽は素材ですが、選択も良く雰囲気に合っています。プレイ時間は1時間弱くらい。肩肘張らず、少し変わった物語を読んでみたい方、どうぞ。

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