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雨の声

【雨の声】 ■制作者/Rainforest(ダウンロード
■容量/271MB

14歳の高彦は、子供の頃から異世界の少女と頭の中で会話できるという特技を持っていた。彼女の名前はクグリ。しかも彼女の世界は不思議に地球とよく似ているという。いつしか彼女と会話する生活が当たり前になった頃、学校で幽霊騒動が持ち上がる。雨音と雨の風景が印象的な、不思議な恋愛ノベル。

ここが○

ここが×

■きみとぼくと雨のうた

雨の日をテーマにした作品って、案外多い気がします。古くは「8月7日の雨宿り」、最近では「あまやどり」がありました。雨の日は不思議に思索にふけりたくなるものですが、そんなところが作者さんの興味をそそるのかも知れません。この作品も、全編雨の雰囲気で統一された、不思議なムードです。

この作品は、「異世界コンタクトもの」。「夏の日のレザナンス」のような感じと言えば分かりやすいでしょうか。あちらは携帯電話によるホログラムで会話できたのに対し、こちらは頭の中でのテレパシー。そしてあちらは夏の日、こちらは雨の日。着眼点自体は似ていますが、かなり違った印象を受けます。

まずいきなり苦言なのですが、この作品はフォントが小さくて読みにくすぎます。フォントが小さいだけならまだしも、文字色が黒で白い縁取りがつき、しかもアンチエイリアスされているため、黒い背景に表示されると、とてもじゃないですが長時間読めたものではありません。幸いにして(?)ツールがYuuki! Novelであるため、フルスクリーンでプレイしました。フルスクリーンでないと読むのが苦痛になる作品というのもあまりありません。フォントが大きければ良いというものでもありませんが、やはり読み手に優しい大きさというのはあるのではないでしょうか。また、ウェイトがいやに多くて長いのも気になりました。

さて、この作品は少し変わった設定に対し、物語はオーソドックスな恋愛ものです。文章は微に入り細にわたって描写されるため、恋愛ものとしての説得力は高いです。中盤以降の高彦の葛藤など、真に迫って来ました。が、あまりに描写が細かすぎて、時に胃にもたれてしまうところが多かったように思います。

主人公が落ち込んだりするシーンで、とにかく延々と「いかに主人公が苦痛に感じているか」を一人称で描写するため、もしかしたらこの辺りは付き合いきれなくなる人が出るかも知れないと思えたほどです。しかも悪い事に、落ち込んでいる主人公に対し、プレイヤーはかなり高い確率で「先読み」が出来てしまうんですよね。「恐らくこう進むんだろう」と薄々気付いているのに、主人公だけはそれに気付かずにずーっと落ち込み続けるので、読み手としても参ってしまいます。

こういう展開をさせる作品では、カメラアイに徹するとまでは言わなくても、もう少し抑えた描写にした方が良かったように思います。辛い経験をした人が、いちいちその心情を細かく語らなくても、その言動を見れば、傍にいる人には十分分かる事です。もう少し、読み手に委ねるところがあってもいいんじゃなかったかなあと思います。また、もう少し「じっくり語るところ」と「淡白に流すところ」のメリハリも欲しかったですね。ラストまで凄く引っ張るのに、ラスト自体はえらくあっさりと終わってしまいますし。

そのラストですが、「こういう終わり方でいいの?」という感じがします。読み手が参ってしまうほど沈んだ主人公が、とある事実を知って一気に回復する、その辺りも何ですが、何だか身勝手さを感じてしまったのは私だけでしょうか(汗)。主人公自体決して嫌な奴とか性格に問題がある奴ではないのですが、そういう意味で主人公に感情移入し難く感じました。

展開自体は、オーソドックスではありますが、独特の世界観が、雨の音や雨の背景と上手くマッチし、また恋愛要素とちょっとしたSF風要素が適度に絡んで、まとまった作りです。日常シーンとイベントシーンの配置バランスが良く、そういう意味でのストレスは感じませんでした。また、物語の適度なスケールと適度な日常感は、雨の雰囲気と合っていて心地よいです。しかし容量の巨大さは謎です。1枚絵もなく、背景もそれほど多い訳ではないんですが……。

プレイ時間は3時間くらいだと思います。選択肢はありません。フォントの小ささですぐに挫折しそうになるんですが、独特の上質な雰囲気をもった作品ですので、時間のある時に腰を据えて読んでみてください。

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