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天雨月都

【天雨月都】 準推薦
■制作者/Project天月(ダウンロード
■容量/11.2MB

高校生の小日向薫の下駄箱に、ある日手紙が入っていた。まさかラブレター? 薫はわくわくしながら待ち合わせ場所に行く。現れたのは学園のアイドル、小日向椎子。しかし薫はいきなり椎子の脚を側頭部に受けて、ぶっ倒れてしまった。テンポ良く進む、名高い学園伝奇アクション。

ここが○

ここが×

■生きる資格ではなく、義務がある

有名作です。今更という気もしますが、この作品を取り上げていないのもどうかと思うので、ようやく取り上げた次第です。この作品を取り上げていなかった理由は、ただ一つ。「完成品ではないから」です。しかしそんな事を言えば「ちょこっとループ」だって完成品ではないですし、このままでも十分楽しめますから、覚悟を決めて(?)レビューを書いてみます。

この作品は、オーソドックスな伝奇ものです。一言で言えば「異能者バトルもの」ですね。「Midnight Celebration」が近いでしょうか。この手の作品は、作品内でだけ通用する特殊な世界観があるんですが、そこへの引き込み方は上々です。ここが上手くないと、序盤でいきなりついていけなくなる作品になりますが、冒頭から少しずつ独特の世界観を織り交ぜて行き、読者を物語に引き入れる事に成功していると思います。

また、キャラクターのやり取りもいいですね。キャラクターの配置バランスも良いです。友人の加納、お手伝いさんの小夜子が、上手く世界観をまとめています。全体を見れば、よくある作品と言えばよくある作品ですが、よくあるネタで楽しませる方が実は難しいものです。バトルシーンの緊張感も特筆できると思います。

この作品をプレイした人が一番思うのは、立ち絵でしょうね。正直上手いとは言い難いです。「ゆうとっぷ」みたいな感じと言えば想像しやすいでしょうか。ヒロインの椎子は「学年のアイドル」という設定なんですが、立ち絵がそういう感じではないので、その設定が少々説得力を欠きますし(汗)。しかし、読んでいるうちに「この作品はこれで良いのだ」と思えてくるから不思議です。これは、テキストのなせる力でしょうね。

この作品は「お試し版」と銘打たれており、そのせいかいくつか全く解決しないまま残される謎もあります。そのせいで、プレイし終えてもイマイチすっきりしないんですよね。お試し版がリリースされてから数年が経過してますし、作者さん自ら「お試し版」と明言していますので、文句を言う筋合いもないんですが、作者さんが言われている残り2本のストーリーがどうなっているのか、非常に気になります。私は椎子編を先に読みましたが、「ええっ、あれとかそれの秘密は、一体どうなったの!?」と思いましたし。

もう1つ。この作品は、主人公が強力に物語を引っ張るタイプのお話ではありません。主人公が異能者バトルに割って入れるようなキャラクターではないので、後半までは「流れに身を任せる」ような感じの展開になっています。これはこれでありとは思いますが、読者としては少しもどかしさを感じるのも事実です。もう少し、主人公が自ら物語を切り開くところが欲しいように感じました。

とは言え、「流されてどう転がるか分からない」物語を好む方もおられるでしょう。これは私の好みの問題かも知れませんから、こういう手法もありなのかも知れません。展開のテンポは非常に良く、変に流れが澱む事もありませんので、そういう意味ではとても快適に読めます。

この作品でプレイできるのは、椎子シナリオと都紀子シナリオです。私は都紀子シナリオの方が「分厚く」感じました。両方のシナリオを読むと、メニューに「次回予告」なる選択肢も登場します。それを読むと、ますます隠された謎の真実が気になりますね。

物語には恋愛要素もありますが、恋愛ものとしてみれば若干の弱さを感じなくもありません。ヒロインが主人公に好意を持った理由に、もう一歩の踏み込みが欲しいと感じたのです。椎子シナリオではその点の説明もありましたけど、当初は主人公に好意を持っているとは到底思えないし(笑)。ま、この作品のメインは恋愛ではなく、恋愛要素は味付けの1つでしょうから、それでいいのかも知れませんね。

バッドエンドも結構ありますが、バッドエンドでは加納と小夜子が分かりやすいヒントをくれますので、難易度は高くありません。システムは吉里吉里。プレイ時間は、全部読んで5時間くらいでしょうか。今となっては望むべくもないのかも知れませんが、完成版が公開される事を、切に願います。

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