ららら
■制作者／ちゃろ（公開終了）
■容量／13.5MB
いつも通りの憎まれ口を叩き合う悪友との帰り道、主人公が偶然出会ったのは、事もあろうにかつての自分の彼女だった。そして蘇る、思い出したくもない想い出。独自のセンスで綴る、ほぼ一本道の恋愛ノベル。
ここが○
- 独自の表現センスが光る。文章力も上々。
- 誰もが身に覚えのありそうな題材を、うまくノベルとして料理。
- 余韻を感じさせる終わり方。
ここが×
- 無駄にウェイトが多い。
- ラストに繋がるところはもう一ひねり欲しかった。
- 文章表示が遅く、ストレスの元。
■そんな過去もあります
今回は以前「できれば相手にしたくないツール」とも表現した、「恋愛シミュレーションツクール２」製のノベルをご紹介。この恋シミュツクール２、最初に出るロゴがうざいわセーブ方式は手抜きだわインターフェースはがたがただわ、プレイする側から見たら散々なツール。まあ、作る側からすれば作りやすいのかもしれませんが、完成したゲームの遊びやすさが、明らかにフリーソフトであるNScripterなどと比べて劣っているというのは、どうした事なんでしょうか。「３」が出るのならぜひ改善を願いたいものです。ま、これは作者さんの責任ではありませんから、ツールについての文句はこれくらいにして……。
さて、本作の出だしは悪友との日常で始まります。ありがちな感じですが、文章はなかなか読ませます。一部くどく感じる点（友人とのやりとりとか……）もあるんですが、文章力も相まってかそれほど気にはなりません。そして物語は主人公の回想の形で進んでいきます。30分程度の短いお話で、選択肢はたった１つしかありません。
で、この主人公の過去というのがなかなか「あいたたた……」です（笑）。どう痛いかは読めば分かるけど、世の中に溢れる「感動系」ではない事は確かでしょう。しかし、「幼馴じみが不治の病で」などと言う経験はなくとも、この作品に出てくるような経験持っている人、案外多いんじゃないでしょうか。そんな男性ならひょっとしたら持っているかも知れない、恋愛の痛い経験を、割合抑え気味の筆致で語ります。
素材はほぼ恋ツク２のもののようです。キャラは言うに及ばず、音楽などもそうみたいです。だから「Sake of you」あたりと同じ曲、同じ背景ががばしばし出てきます（笑）。まあそれは良いんですが、全体に非常に読み進める上でのストレスとなる点が多く感じました。ウェイトが多くて長すぎたり、テキスト表示が遅かったり…。まあテキストはクリックで飛ばせますが。あとは演出ももうちょっと考えた方が良いように思いました。今更ながら、ツクール作品ながら「Sake of you」はよく考えて作られていたな、と思い知りました。
と、システムにはえらく文句をつけたくなる点もあるんですが、内容は結構私好みでした。30分作品としては、なかなか良い余韻を感じさせてくれます。ただ、ラストへ繋がる点でもう一ひねり二ひねりが欲しかった気もします。そして主人公と、ヒロインの渚との間の描写をもうちょっとしてくれたらな、などと。尤も、あまり描き過ぎずあれくらいがちょうど良かったのかも知れませんが……。
作者さんはゲームは作り慣れていないっぽいんですが、文章とか会話のセンスには非常に良いものを感じました。中盤から後半は、シナリオと言うよりも表現センスに惹かれました。今後数を重ねてノベル製作に慣れていけば、この作者さんは更に素晴らしい作品を生み出す可能性があると思います。期待票を１票と言うことで。（06/10/1追記 作品の公開は終了していますが、資料としてレビューは残します）