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KEY* -Reach for the star My Hand-

【KEY* -Reach for the star My Hand-】 準推薦
■制作者/六神合体(ダウンロード
■容量/239MB

主人公庄壱は、不治の病に冒され入院中。世の中の事すべてに絶望し、両親をも拒絶していた。そんなある日、妙に能天気な五十鈴と名乗る少女が彼の前に現れた。彼女の意図は一体? 独特の節回しとテンポが面白い病院ノベル。

ここが○

ここが×

■受け取って、魂のバトン

2作連続で病院ものが続きます。この作品は「memorieZ」の作者さんの作品。と言っても、公開されたのはそもそもこちらが先で、この作品は作者さんの処女作のリメイク版です。リメイク前の作品もプレイしていたんですが、終わり方が唐突すぎて呆気にとられてしまった記憶があります。リメイク版ではそこらが上手く改良されていました。良いリメイクだと思います。

この作品を分類すれば、病院ものの中でも「不治の病もの」ですが、その中でも今作では、主人公もヒロインも不治の病という、ちょっと変わった設定です。ときくと、思い浮かぶのは「ナルキッソス」です。もちろん、あの作品と今作では、雰囲気もストーリーも180°異なりますが。

通常、不治の病ものの展開は2種類しかありません。つまり「不治の病が奇跡的に治りました」とするか、「やっぱり死んでしまいました」とするか。なので、取り上げるテーマの重さの割に、展開は一本調子になりがちなのです。なので、治るにせよ治らないにせよ、その過程でいかに差別化するかが作者さんの腕の見せ所です。上に挙げたナルキッソスもそうですし、メールでのやり取りを前面に押し出すとか(You'we got a friend)、移植にまつわる物語を持ち出すとか(call sacrifice heart)、まあ色々ありますが、今作はそのどれとも違った切り口です。

そして、この独特の切り口が、シナリオの作りとも関係しているというのが、面白いところです。具体的には挿入される過去回想がシナリオ上で重要な役割を果たすのですが、過去回想という、今では比較的ありがちとなった演出をテーマと上手に絡ませつつ、主人公と医師である雪彦の暴走ぶりの会話でそれをカムフラージュし、独特のテーマが最後で実を結ぶ、という作りが、今作の見所です。また、鍵や日記という小道具も効いています。

ただ、雪彦というキャラウターは、あまりと言えばあまりにアレなので、人によってはくどく感じたり、ついていけなくなる恐れもあります。血を吐く演出は、少し繰り返し過ぎだったかな、と言う気もします。この「天丼」こそが作者さんの持ち味なんじゃないかと、私は思ってますが(笑)。

また、最初何事にも絶望していた主人公が、途中で結構あっさり心を入れ替えてしまっているんですよね。その分、この手の作品にありがちなだらだら感がなく、非常にきびきびとテンポよく読めるんですが、両親とのくだりなどは、もうちょっと筆を裂いても良かったんじゃないかと思います。あとは、五十鈴の病気の件についても、読者は早いうちから見当がつくと思いますから、開き直って前半からもっとそれっぽい描写をしておいた方が、後半の説得力が増したような気もします。

それと、個人的に気になった事ですが、過去回想編の和。教会関係者が、そういう事言っちゃ駄目だろう、と。少し外れているくらいならいいんですが、彼女の言葉は、キリスト教を根本から破壊してしまってます(爆)。なので、教会関係者の端くれとして、一応申し添えておきます(笑)。

立ち絵は上手いというタイプではないんですが、これはこれで味があって、作風によく合っていると思います。シナリオも絵も1人で作る作品ならではですね。また、クリア後はおまけが色々読めます。本編以上に壊れた雪彦が見られたり、本編で語られなかったエピソードを補完したり、バラエティ豊かで楽しめますよ。

ツールはLive Maker。画面は最近流行りのワイドですが、ワイドの意味はほとんど感じられません(おまけの一部のシーンくらいか(汗))。選択肢はなく、プレイ時間は2時間弱でしょうか。評価に迷いましたが、こちらの方が本来先に出されたという事を考えて、準推薦。正統派の病院ものに飽きたら、こんな変化球はいかがでしょうか。

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