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エイト・ストーリーズ

エイト・ストーリーズ 推薦
■制作者/史ノベル製作プロジェクト(ダウンロード
■容量/265MB

高校1年生の史と、3年生の響はいとこ同士。本が好きだが片付けが苦手な響のため、史は本の整理を手伝いに来ていた。ひょんな事から史は響とデートの約束。翌日、服装選びに手間取った史は、嫌な予感を抱えつつバスを飛び出した。8人のライターが贈る、豪華な合作ノベル。

ここが○

ここが×

■1つのはじまり、8つの物語

とうとうやってまいりました。NaGISA net300本目のレビューにして、自分がプロジェクトリーダーを務めた作品を、こともあろうに「推薦」にしてしまうという暴挙(笑)。という訳で、「エイト・ストーリーズ」のご紹介です。作品ができるまでの紆余曲折などを語るとレビューにならなくなるので、今回は純粋にこの作品のレビューという形で書いていきましょう。

この作品は、素材サイトNovelers' Materialのアピールのために企画され、8人のライターが集まって作られた短編(中編?)集です。なので、使用されている素材は全て、Novelers' Materialに入っているものです。そして今までになかった(と思われる)特徴の1つは、「共通ルートからの分岐を8人で作る」というものです。中には「そういう方向性から攻めてくるか!」と思わされる分岐もあり、普通の「分岐したけどシナリオ内容は大差がない」、あるいは「分岐=特定のキャラクターの攻略ルート」みたいなものとは、一線を画したシナリオになっていると思います。8人のライターが過去に手がけた作品は、「Beyond the summer」「Homeless, the Vagabond」「こんな物語」など、レビューでもおなじみの名前が並んでいます。

エイト・ストーリーズ物語は、主人公の史が従兄の響とデートの約束をしたが、服装選びに手間取って遅れてしまって……という出だし。作中の某シナリオでも書かれていますが、そう言えば「君望」なんてのもありましたね(笑)。まああんな感じです。共通ルートは20分程度ですが、そこからの分岐がメインディッシュ。分岐形式は、選択肢ではなく作品名をそのまま選ぶというストレートなものです。作品コンセプトからして、分岐システムを複雑にするよりは、これで良かったのではないでしょうか。

普通複数ライターが携わる分岐ものというと、なるべく各ルートで整合性をとろうとするものですが、この作品に関しては一切そういう事は行われていません(爆)。もちろんプロットの状態では、ネタが被らないような話し合いはなされましたが、細かいところはライターさんの裁量にお任せとなっています。

なので、各ルートはそれぞれのライターさんの色が非常に色濃く出た内容や文章です。ついでに言いますと、スクリプトもそれぞれのライターが独自に書いています。各シナリオを書いたライターの名前はそれぞれのエンドロールで明かされますが、各ライターさんの作品をプレイしていれば、割と簡単に「あ、これはあの人だ」と分かるでしょう。

ただその反面色々な意味で統一性は全くないので、キャラクターがシナリオによって全然違う性格になったり、設定がとんでもない事になっていたりするところもあります。人称の扱いや文体も、シナリオでばらばらです。気になる人は少し気になるかも知れません。

また、一部の立ち絵は絵師さんが違うので(この辺りの事情を知っているだけに、仕方ないかなと思える面はありますが)、違和感を感じる場面もあったりします。主人公である史も、とあるシナリオでは大和撫子のお嬢様ですが、とあるシナリオではいきなり二日酔いだったりしますし(笑)。ま、そういうばらばらさが、ある意味こういう合作ノベルの面白いところ、という事にしておいてください。

さて、各シナリオについてですが、これを書いてしまうと面白くないので、私からはあえて詳しく書きません。それぞれのシナリオは、短いもので40分、長いもので1時間半と言ったところです。それぞれのシナリオも、不条理ものあり、ミステリー風あり、小説風あり、どたばたラブコメありで非常にバラエティ豊かです。

身内補正が入っている感は否定できませんが(笑)、フリーのノベルゲームが何だか「商業や同人の体験版公開の場」みたいになっている事も多い昨今、私は「フリー主体に作っているライターによる、フリーならではの作品」になったと思っています。「フリーノベルゲームの缶詰」とでも言いましょうか。これをプレイされた方は、是非各ライターさんの他の作品も読んでみてください。

システムは吉里吉里。選択肢は上にもあるように、分岐点の1カ所だけです。プレイ時間は、全部読んだら多分6時間~8時間だと思います。じっくり楽しむもよし、一気に読むもよしです。クリア後のおまけもやたらと豪華なので、共通ルートから始まる8つの物語を、最後の最後まで是非楽しんでください。

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