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スキ×サヨナラ

私は反面教師 ■制作者/mint wings(ダウンロード
■容量/39.4MB

中学3年生の桃香は、ある日車にはねられて命を落としてしまう。現世に留まり続ける桃香の前に、彼女が好きだった俊介が現れた。現世を離れられない桃香には何か未練があるのか。そして自分の想いを抱え込む、俊介の幼馴染み理央は。2人のヒロインの視点から描かれる恋愛ノベル。

ここが○

ここが×

■I love you, だからさよなら

私は時々女性向け作品もプレイします。女性向け作品って、男性には抵抗があるものも多いかも知れませんが、この作品はあまり女性が主人公というのをあまり前面に押し出していないため、男性でも楽しめると思います。女性キャラはメインヒロインの桃香と、幼馴染みの理央の2人。この2人の視点が交互に入れ替わりつつ、物語が進みます。「RIDDLE -piece of memory-」の作者さんの作品です。

出だしでいきなりヒロインの桃香が車にはねられて、死んでしまいます。桃香は幽霊となって恋人である俊介の元に現われます。まあノベルゲームのシナリオとしてはよくある感じの出だしですね。いきなり冒頭で車にはねられて死んでしまうという点では、「明けない夜が来る前に」が同じ雰囲気ですね。あっちでは死んでしまったのは男性主人公ですけど。

スキ×サヨナラこの手の作品では、幽霊が最初から幽霊である事を明かすかそうでないかなど、色々作り方があるでしょう。例えば「幽霊には祈らない」だと、幽霊の存在に謎が隠されていましたし、幽霊である事自体を隠している作品もありますが、この作品は桃香の事故で物語が始まり、桃香も俊介も、最初から彼女が幽霊である事を自覚している、ストレートな作りです。

この俊介は桃香の恋人なのですが、もう1人登場するサブヒロインの理央も、俊介に想いを寄せているという設定。幽霊ものと、「一歩踏み出せない幼馴染み」ものを掛け合わせたような感じです。女性向け作品であるが故に、俊介の側から心情が描かれる事がないんですが、それがプラスに働いています。変に俊介の心情を描き過ぎていたら、くどくなっていたでしょう。読み易い物語だと思います。

ただ、メインヒロインである桃香と俊介が知り合う過程とか、2人の関係みたいな物の描写が少々希薄です。知り合ったのがゲームセンターって、いやまあきっかけなんてそんなものかも知れませんけど、この2人の間の描写にドラマティックな要素が薄かったので、少し後半の展開が説得力を欠いたきらいがあります。

加えて、サブヒロインである幼馴染みの理央の、立ち位置と言いますか扱いが、中途半端というか、桃香に対して差がありすぎる気がします。それでいて過去描写などは理央>桃香なので、何とも言えないバランスの悪さが。もうちょっと彼女を上手く組み合わせて、オチを綺麗にまとめられなかったものですかねえ……。別に俊介と理央をつき合わせろ、とまでは言いませんが、現状だと桃香のお陰で俊介と理央が新しい一歩を踏み出すという訳でもなく、言ってみれば「桃香がいなくなった意外は、今までと同じ」なんですよね。

なので読後に何とも言えないもやもや感を感じます。エピローグでも、完全に死んだ桃香がメインで、生きている理央は「ただの幼馴染み」から何ら脱却出来ていない感があるんですよね。理央がああいう扱いなら、せめて「俊介が新しい一歩を踏み出す」という、もうちょっと先まで描写して欲しかった気がします。女性がプレイした場合は分かりませんが、ちょっと俊介の言動に共感し辛いところがあります。

しかし、ラスト近くはなかなか魅せてくれる展開です。実は俊介と桃香は……から、ラストシーンに繋がる流れは綺麗ですし(まあ先読みが好きな人なら読める流れではありますけど)、物語の収束自体は丁寧です。また、物語自体はシリアスではあるんですが、やり取りが軽妙でほのぼのとしており、重さを感じさせない描写には、作者さんの上手さを感じます。

音楽は全編ピアノで統一されていて、雰囲気を高めてくれます。グラフィックスも綺麗ですね。ツールはNScripter。選択肢はなく、プレイ時間は1時間前後でしょう。読後感が爽やかとは言い難いですが、こういう先をいろいろ想像してしまうような終わり方の作品も、時にはいいかも知れません。

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